野生生物が大量犠牲 山火事を止めるべきか?止めないべきか?
――今年3月に終結宣言が出されるまで、オーストラリアでは10億匹以上の野生動物が犠牲になったともいう、壊滅的な森林火災が起きていました。火災によってエサがなくなった動物の絶滅すら危惧される状態だといいますが、どう考えられますか。
小林 山火事は自然現象として普通にあるもので、本来は大したことではないんですよ。多いのは落雷で発火するケースです。
たとえばアメリカのワイオミング州にあるイエローストーン・ナショナルパークでは、山火事が起きたときに、止めるべきか、自然現象だから止めないべきかという議論が必ず出ます。火が住宅地に迫ると、さすがに人間の立場としては止めざるを得ないわけですが。
――確かに、自然の営みの結果として生物が滅びるのは、地球の歴史においては当たり前のことかもしれません。
小林 火が消えたらまた次の生物が生まれますし、絶滅それ自体は必ずあるんです。ただ、個人的には“全体の器”というか、生物が生きていけるような環境を保つことが大事だと考えています。種の中身は変わってもいいけれど、数百万種の数はあまり変わらないことが大事だと。
――恐竜を台頭させた三畳紀末の大絶滅も、鳥以外の恐竜が滅んだ白亜期末の大絶滅もそうですね。ティラノサウルスやトリケラトプスがいなくなったのは残念だけれど、この大絶滅が起きていなければ私たち人類も存在していません。
小林 はい。もっとも、地球上で生物が最も絶滅している時代は、実は現代なんです。僕は科学雑誌『ナショナル・ジオグラフィック』の助成金の選考委員も担当しているのですが、いま助成金申請がおこなわれる研究の多くは「絶滅」関係ですよ。どこどこの島でこの動物が絶滅した、あの動物が絶滅した……という。過去に地球上で発生した大量絶滅のうち、第5回目が恐竜の絶滅で、第6回目は現代です。