77億人の人類を絶滅から救うには?
小林 現在の世界の人口は約77億人。高等生物がこれだけ増えるのは異常事態です。環境破壊や地球温暖化といった言葉を挙げるまでもなく、人類の存在が最も生命を絶滅に追いやっていると言えるでしょう。
――現代が大量絶滅時代である原因は、主に産業革命以降の人類の営みと人口爆発が理由と考えていいでしょうか?
小林 はい。現在、地球上の人間全員を先進国の生活水準まで引き上げようとするなら、地球が2個半必要だと言われているんです。2050年には地球7個半~8個が必要になる。つまり、それだけ地球に負担をかけているということですね。
なぜ人類という種が地球上でこれだけ繁殖(僕は「繁栄」と言わず「繁殖」と言うんですが)したか。それは肥大した大脳を持つ人類が、技術や文明を進歩させたためです。なので、人類は絶滅しましょう。……と、僕はよく講演の締めでそう言ってみるのですが、聴衆はシーンとするわけです。
――重いですね。かといって、人類が絶滅するわけにはいきませんし……。
小林 はい。そこで僕はさらに続けて「実はそうじゃない。ここで立ち止まってみた時に、過去の生物で人類みたいに大繁栄して絶滅したのは何でしょう。それは恐竜なんです」と話すようにしています。人類も恐竜みたいに絶滅していいのか、そうじゃないですよね。
恐竜は1億7,000万年間も地球上を支配したにもかかわらず、6,600万年前にたった10kmの大きさの隕石が落ちただけで絶滅してしまった。現在はそれ以上の速度で生命が地球上から居なくなっているのですが、人間も恐竜みたいに本能のまま生きていれば、恐竜の二の舞ですよと。
――そうですね。
小林 じゃあ一人一人何をしたらいいかというと、ノーベル賞みたいな大発見をする必要はなくて、ちょっとしたことでいい。ゴミの分別でも、節水でも節電でも、できることを。
もちろん、人類はいつか絶滅しますし、それは避けられないことです。ただ、人間は考える力や、それを他者に伝える力を持っているわけですから、絶滅を先に伸ばすことはできる。恐竜はそういう教訓も伝えてくれていると思いますね。
※安田峰俊氏による小林快次教授の評伝「令和の開拓者たち」は「文藝春秋」5月号および「文藝春秋digital」に掲載しています。