*以下の記事では、Netflixで配信中の『ブラックミラー』シーズン3第4話の内容と結末が述べられていますのでご注意ください。

 生活のほとんどがオンラインで代替できるとしたら――仕事はテレワーク、授業はオンライン、飲み会もSNS、買い物も食事も宅配でいいとしたら――それがもっともっと進んで、たとえばこの現実の全てがヴァーチャルで行うことが可能だとしたらどうだろう? 

 肉体に死が訪れたとしても、クラウドに意識を移して、そうして永遠に生き続けられるなら? 

 Netflixの一話完結型オリジナル・ドラマシリーズ『ブラックミラー』に、「サン・ジュニペロ」と題されたエピソード(シーズン3第4話)がある。

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Netflixオリジナルシリーズ『ブラック・ミラー』シーズン1~5独占配信中

 カリフォルニアと思しき夏の海辺の街を舞台に描かれるこの物語は、肉体的接触を可能な限り拒絶し、可能なものは全てオンラインで代替することが求められている昨今、最も観るべき作品のひとつのように思う。

 なぜなら「サン・ジュニペロ」とは文字通り、この現実の全てがヴァーチャルで可能だとしたら、と問いかけるSFドラマなのだから。そしてなおかつ、SFによって女と女の愛を祝福している、とびきりのラブストーリーなのだから。

一見、普通のラブストーリーに見えるが……

 とはいえ「サン・ジュニペロ」は初め、とりたててSFとは関係ない、普通のラブストーリーのように見える。

 物語の始まりは1987年の海辺の街サン・ジュニペロである。地味な服装に大きなメガネをかけて、いかにも物慣れない様子でクラブへと向かう女性、それが主人公のヨーキーだ。そして手持ち無沙汰のヨーキーの前に、突然見知らぬ女性、ケリーが現れる。ケリーは遊び慣れている風で、華やかで、ダンスフロアで踊ればとびきりセクシーである。

 正反対のふたりはあっという間に意気投合して、恋に落ちるのだ。

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 作品の前半をなす、何もかも「初めて」のヨーキーと、ヨーキーが気になるのに逃げ回ってしまう遊び人ケリーのラブストーリー。それだけでも十分にひとつの映画になりそうなくらい素敵なのだけど、「サン・ジュニペロ」の魅力は2人が惹かれ合う描写にとどまらない。

 物語の後半では、「サン・ジュニペロ」とは、実は架空のヴァーチャル空間上の都市であることが明かされる。