金原会長を下ろした2人が“ナゾの転向”
「それが専務理事の2人でした。この2人が抜けたら協会の業務が回らないというのは、理事たちが一番よく知っていたわけで、それで『岡本さんでいこう』と言っていた人たちが金原さんの票に変わって再任したというのが経緯なんです。
しかし、私は専務理事の2人が金原さんを戻そうと思ったところが、いまだにわからないんです。なぜならば、この2人は前年に金原さんを問題があるとして会長から下ろしたメンバー。選手の環境改善のために私はアスリート委員会の仕事を2人のサポートのもとでやり始めていた時期で、その変心によけいに驚きました」
ガバナンスを効かせるために送り込まれ、金原会長を下ろした人物がなぜこのときは逆に擁立に動いたのか。何があったのか。投票は無記名ではなく記名投票で行われ、踏み絵を踏まされる格好となった。
テコンドー協会の「信じられない初歩的ミス」
「金原さんが再任されると、ナショナルコーチが降ろされました。代わりに2018年に小池隆仁さんがナショナルのコーチに入ってきた。するともうその直後から、信じられないヒューマンエラーが出て来て、選手に対する大きな不利益が生じて来たんです。具体的に言うと、この年の8月にあったモスクワGPに対するエントリー漏れです。選手にとって大事な遠征だったのに事務手続きのミスでそれに行けなくなってしまったんです」
GPは誰もが出場できる大会ではなく、各階級の世界ランキング上位者がWT(ワールドテコンドー)に招待される大会である。名誉であると同時に強化においては重要な機会だ
「そこに日本で呼ばれたメンバーが3人いて、その3人のうち2人のエントリーを漏らしたんです。なぜ起きたか? 国際大会登録のための端末は協会事務局にあるので、当時のコーチがエントリーメールを事務局に送ったのですが、それが届いてなかった。
送ったというコーチと、貰ってないという事務局とで、責任のなすりあいが始まったんですよ。私はその一報を聞いたときに、即座に選手たちが所属する大東文化大学に直行しました。とにかく本人たちに伝えて謝る必要があると思って。本人たちは『もう信じられない』と」
のちに強化コーチが事務局のメールアドレスに送っていなかったことが判明したが、選手にしてみれば、調整を進めていた海外遠征が指導者の不手際で断念させられるというあってはならないミスであった。