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SNSにこそ「ソーシャル・ディスタンシング」が必要だ――宇野常寛×茂木健一郎

パンデミック下の「知的生き残り術」#1

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 新型コロナウイルスで自宅に逼塞し、ネットばかりに触れているという人も多いのではないだろうか。しかしその中でデマに「感染」してしまうリスクもある。新著『遅いインターネット』で、ネットとの適切な距離の取り方を主張した評論家の宇野常寛さんと、脳科学者の茂木健一郎さんが、パンデミック下での「知的生き残り術」について語り合った。

ライフスタイルを見直す好機に

茂木 緊急事態宣言後、生活はどう変わりましたか?

評論家の宇野常寛さん

宇野 もともと僕はランニングに出かける以外は、自宅と事務所のある高田馬場から出ないので、あまり変わりありませんね。むしろ、行きたくないけど義理で出なくちゃならない飲み会とかが全部無くなって清々しささえありますね。

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茂木 僕はお酒好きだから、家飲みだけだとちょっと寂しいけれどなあ。それにしても、今まで毎日職場に通っていた人は、急に家にずっといるようになるとモードの切り替えが大変でしょうね。

宇野 ただ、このパンデミックという災いを、僕らのライフスタイル全体を見直す、良い機会として生かしていくこともできると思うんです。

 たとえば、インターネットとの付き合い方もその一つです。この間も、「5G回線で新型コロナウイルス が感染る」といったフェイクニュースや陰謀論の類が大量にネット上を飛び交いました。なぜそうなるかというと、この先どうなってしまうか分からない恐怖・不安を、人々がSNSで過剰に繋がることでごまかそうとしているからだと思うんです。「いますぐ結論は出ない」「自分にできることは特にない」という状況を受け入れることができずに、それを安易なつながりで、共感でごまかそうとしている。この心理が明らかにインフォデミック(不確かな情報の爆発的拡散)の温床になっている。今僕らに求められているのは、孤独に耐え、すぐには分からないことをそのまま受け止める強さではないでしょうか。

脳には「ぼんやり」が必要

脳科学者の茂木健一郎さん

茂木 なるほど。Self-isolation(自分を隔離する)という言葉が国際的に流行っているのも、そういう背景かもしれない。ニュートンが万有引力の法則を発見したのは、ペストが蔓延して、そこから疎開していた期間だと言われています。いわゆる創造的休暇というやつですね。コロナによる我々の巣篭もり生活も、そうやって考えるとチャンスなのかもしれない。

宇野 感染を防ぐためにソーシャル・ディスタンスをとれ、ということが言われていますよね。でも今ほんとうに必要なのは、情報的なソーシャル・ディスタンシングだと思うんです。

茂木 一回立ち止まるってすごく大事な気がしますね。脳がアイドリングした時にはじめて活性化し始めるデフォルト・モード・ネットワークというものがあります。いわば「ぼんやり」した状態の中で、記憶を整理したり、感情を整えたりする機能が働くとされているのです。でも、四六時中情報機器につながっていると、脳の状態を整える暇が無くなってしまう。今はいったんオフラインするいい期間かもしれませんね。