文春オンライン

わたしの「神回」

2020/05/01

あいみょんが官能小説を語る回

 最近では、ミュージシャンのあいみょんが作詞する際に官能小説からインスパイアされることが多いと発言しているのを見逃さず、さっそく本人が影響を受けた作品について語る企画を組んでいた。官能小説といえば、池袋北口のチャイナタウンをとりあげた回で、ゲストの中国人タレントのローラ・チャンが、書店で中国語のその手の小説を手に取り、目を通すうちに日本語には訳せないと恥ずかしがっていたのをいまでもときどき思い出す。

昨年4月のタモリ倶楽部で、作詞にもいかしているという官能小説について語ったあいみょん ©文藝春秋

 池袋北口のチャイナタウンはいまでは結構有名になってしまったが、放送された10年ぐらい前にはさほど知られていなかったのではないか。低予算ながら、都内かその近郊であればロケに出向いたり、フットワークが軽いのも『タモリ倶楽部』の持ち味である。近年でも、パキスタン人が多く暮らしている埼玉県八潮市や、エチオピア人が急増しているという葛飾区四つ木などにスポットを当て、現地に住む外国人から暮らしぶりなどを聞き出していた。外国人に日本のすばらしさを語らせるような番組が目立つ昨今のテレビ界を思えば、外向きの姿勢を貫く『タモリ倶楽部』は貴重だ。

池袋北口のチャイナタウンをとりあげた回で官能小説を翻訳したローラ・チャン

早稲田の学生が「役に立たない機械」を自慢する回

 最近のテレビ界では珍しいといえば、何かにつけて大学生が登場するという点でも、この番組はいまや稀有な存在だ。今年に入ってからも、山手線の全駅の立体模型をつくった昭和女子大学の学生たちがとりあげられていた。ゲストには「タモリ電車クラブ」のメンバーである六角精児たちが出演し、鉄道ファン目線で語るのだが、対する学生たちは自分たちの関心はあくまで駅の構造にあり、鉄道ではないと強調していて、志向にずれがあるのがおかしかった。

 このほか過去には、各大学の鉄道研究会が対決したり、国立音楽大学の全員がチューバ奏者というオーケストラが登場したりもした。なかには、早稲田大学の創造理工学部建築学科の学生たちによる「役に立たない機械」企画のように好評を得てシリーズ化したものもある。「役に立たなくても美しさや気持ちよさが感じられるもの」を旨に、学生たちがおのおの工夫を凝らした作品を披露する同シリーズは、2017年の第4弾では前・後編となり、ゲストにラッパーの宇多丸、お笑いコンビのかもめんたるに加え、芥川賞作家の綿矢りさと、早大出身者がそろった。テレビではあまり見ない綿矢が出演オファーに応じるあたり、この番組の魅力をうかがわせる。

早稲田大学「役に立たない機械」回に出演した、同大学出身のラッパー・宇多丸 ©文藝春秋
同じく「役に立たない機械」回に出演した、早稲田大学出身の芥川賞作家・綿矢りさ ©文藝春秋

 かつて、大学がレジャーランドにたとえられた時代には、学生が出演する番組も多かった。『タモリ倶楽部』の初期でも、学生たちが集まってコンパ芸を披露する回があり、そのなかには早大生だったのちのデーモン閣下も世を忍ぶ仮の姿で登場していたと記憶する(たしかYouTubeで見た)。