文春オンライン

わたしの「神回」

2020/05/01

 そもそもタモリその人からして、早大のモダンジャズ研究会時代に、ラジオの『大学対抗バンド合戦』に出演し、その司会ぶりを番組司会者の大橋巨泉に褒められた過去を持つ。いまや学生を取り巻く環境には厳しいものがあるが、それでも昔と同じく研究やサークル活動を楽しむ学生はいることを『タモリ倶楽部』は教えてくれる。

早大生だったのちのデーモン閣下も世を忍ぶ仮の姿で登場していた!? ©文藝春秋

これぞ神回――坊主の高橋克実がヘアサロンに通う回

 最後に、私が『タモリ倶楽部』から強いて神回を選ぶなら、ぜひ、これをあげておきたい。それは、俳優の高橋克実が月2回は通っているという南青山のヘアサロンで髪を切ってもらう様子を追った回(2014年放送)だ。ご存じのとおり高橋は坊主頭なので、冒頭ではタモリも「髪を切るったって切るほどのもんないでしょう」とツッコんでいたが、いざカットが始まると意外と手が込んでいるので驚かされた。同時に、高橋はタモリとかつて『トリビアの泉』で共演した関係とはいえ、よくこんな企画が通ったと感心したものだ。まさに『タモリ倶楽部』ならではといえる。

高橋克実が南青山のヘアサロンで髪を切ってもらう様子を追った回(2014年)はまさに神回だった

 いまでは『タモリ倶楽部』以外の番組でも、鉄道ファンの芸能人を集めた企画は珍しくない。各分野のマニアが出演する番組も増えた。あるいは飲み歩きや、つまみなどちょっとした料理をつくる企画など、この番組から広まったと思われるものは多い。そもそもテレビ業界全体で番組制作費が減少を続けるなかにあって、放送時より低予算でこなしてきた『タモリ倶楽部』がお手本とされるのは当然といえば当然だ。いわば、テレビ界全体の“『タモリ倶楽部』化”である。ただ、それでも、あらゆるところにセンサーを伸ばしては題材を見つけ出し、アイデアを練って企画に仕立て、それを鋭い観察眼の持ち主であるタモリに提示するというこの番組は、ほかの追随をけっして許さないだろう。

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