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シーズン中、ポイントの上にテントを置いてキープ

 例年なら12月末には結氷するのに今シーズンは結氷が遅く、1月5日になってようやく穴釣りシーズンが開幕した。また、例年なら40cmはある氷の厚みが今年は30cm程度しかなく、開けた穴は1週間もすると水面と接する側が直径50cmくらいまで広がることがあり、こんなことからも、昨年とはようすが違うと感じていた。

 例年なら12月末から2月中旬までは安全に穴釣りが楽しめると聞いていたが、今年は安全面を考慮して1月15日から開始した。また、前年は初心者だったので岸寄りのプール状のポイントで釣ったのだが、今年は良型がねらえる沖側にテントを張った。このテントはシーズン中、常にポイントの上に置いておく。それから私は毎日のように通う常連の仲間入りをしたのだった。

写真はイメージ ©︎iStock.com

 そして3月に入ると、いよいよワカサギシーズンも終了を迎える。3月7日には釣り場の上流100mくらいまで川が開いた。しかし昨年はそれから1週間は釣り続けられたので、まだ大丈夫だろうとは思っていたが、今年は水が下流方向に向かって長く大きく溶けていたのが気になったので、昼過ぎには釣りを止め、明日にはテントを撤収しようと決めた。周囲の常連たちも危険を察知したらしく、大半はその日の午後のうちにテントを撤収した。翌8日、午前中に仕事を終えてから兄を誘って湖に着くと、テントはわずか8張しか残っていなかった。

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 氷の状態が悪い。その日、私も兄もそう感じていたが、そのまま残せば釣り場が汚れるし、ダムの管理側にも迷惑をかける。また、そのことが原因でここが釣り禁止にでもなったら釣り仲間たちに申し訳がないと考えたのである。この浅はかな考えによって、結果的にはもっと多くの人々に迷惑をかけてしまったのだ……。

「落ちた」と言ったのは覚えている

「氷が薄いから無理はしないようにしよう」。兄とそう話し合って、少しずつ歩き出す。ある程度まで進んだ所に古い後家穴があり、調べてみると氷の厚さは20cm以上ある。これなら注意して進めば大丈夫だと思った。それに、誰かがテントを撤収する際に使った真新しいボブスレーの跡がある。この跡をたどれば危険は少ないだろうと考えた(自分の体重が80kg以上あることを考慮しなかったのが誤算)。

 やはり不安なので私が先を歩いた。普段ならテントの跡は後家穴も多いので避けて歩くのだが、この時はボブスレーの踏み跡をあまりにも頼り、注意力が希薄になっていた。

写真はイメージ ©︎iStock.com

「落ちた」と言ったのは覚えている。次いで氷の上に顔だけ出して氷に掴まっていた。兄が言うには、落ちてしばらくは沈んだままで、先に帽子が浮き上がってきて、あとから頭がゆっくりと浮いてきたそうだ。

 兄は私が氷の下に潜らないように氷を掴もうと前屈みになった。その時、兄が立っていた氷も割れてしまい、何と兄も氷の下に落下してしまった。