人間は命の危機を感じる状況に追い込まれたとき、どんな行動をとるのか。そして、何を思うのか——。つり人社の「マジで死ぬかと思ったシリーズ」から、衝撃的な体験談を紹介する(出典:『釣り人の「マジで死ぬかと思った」体験談2』)。(全4回の最終回/#1、#2、#3を読む)
極寒の氷結湖に開いた穴に転落。次いで、兄の足もとの氷が割れた。這い上がるのは困難。私たちに気づく者は誰もいない。もしかしたらこのまま助からないのか。
体験者:M.Y 北海道在住。60歳。渓流釣り歴30年以上のベテラン。
マジで死ぬかと思った度 ★★★★☆
危険がともなうワカサギ釣り
冬の風物詩、氷上のワカサギ釣り。家族連れで楽しむこともできるレジャーだが、実は毎年、何人かが命を落としている危険な釣りでもある。氷が割れて水中に落ちたり、テント内の練炭で一酸化炭素中毒になり、命を落とす者が後を絶たない。しかし、それでも自分が当事者になると考える人は少ないだろうし、かくいう私もそうは思わなかった……。
渓流釣りは30数年の経験がある私だが、ワカサギ釣りはまだ2シーズン目であった。釣り場は北海道の中心部を流れる石狩川の支流・空知川の中流域にある滝里ダム上流部。4、5年前に個人が開いたポイントで、昨年の後半あたりから土日になると30人以上が集まる人気釣り場になった。今年はさらに人気が高まり、平日でも30人以上、土日ともなると50人以上の釣り人で賑わう日もあった。型は10cm以上の良型が揃い、臭みのない美味なワカサギが釣れると評判を呼んだ。しかも、管理釣り場ではないので入漁料はない。ただし、危険に関する管理も自己責任。釣り人個人個人の判断に委ねられている。
前の人が開けた後家穴に足を踏み入れたり、時には胸あたりまで水没するといったトラブルは毎年のように起きていたが、釣り人同士で注意し合ったり、助け上げたりして、これまで大きな事故はなかった。今年2月中旬に氷が薄くなり、テントの中で氷が割れ、胸まで水に浸かる事故があったと聞いたが、その時も周囲にいた釣り人たちが助け上げたそうである。