有望な若手棋士として人気上昇中の近藤誠也七段。インタビュー後半では、6歳年下の藤井聡太七段のこと、「チーム渡辺」の所司一門3人で出場するAbemaTVトーナメントのこと、おしゃれと言われるファッションへの関心、ライバルで仲間でもある同世代棋士たちへの思い、ファンの存在など気になることを聞いてみた。
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靴下とカフスボタンを東京に忘れてしまった
――近藤七段は昨年C級1組にて、藤井聡太七段の順位戦全勝を止めたことで注目を集めました。勝ったほうがB級2組昇級と言っていい大一番でしたね。
近藤 本当は西尾(明)七段にも勝って、全勝で藤井七段戦を迎えたかったです。負けたら終わり(昇級は絶望)だけど、自分は追い込まれたほうが力を発揮するタイプ。すごく重要な対局になったので、かなり対策をしました。ソフトでの序盤研究がメインです。相手の意表を突くような手も研究し、プロになってから一番というくらい徹底的に準備しました。ずっと難しい将棋で最後は競り勝てました。
――研究には何のソフトを使っていますか?
近藤 それは企業秘密で(笑)。
――分かりました。記者の数もすごかったですが、やりにくさはなかったですか?
近藤 藤井さんのデビューから19連勝目の竜王戦6組決勝の相手が僕で、そのときすごい数の報道陣を経験していたので、やりづらくはなかったです。
しょうもない裏話があって、大阪の対局なのに靴下とカフスボタンを東京に忘れてしまいました。気が付いたのは対局の朝で、「困った!」「対局もダメかな」なんて思いました。カフスボタンがないと袖口が留まらないワイシャツで、しっくりきませんでしたし……。でも、靴下は近くのコンビニで購入できて、気を取り直して対局に臨みました。後で、対局の写真を見たら袖口が留まってないのが見えました。
藤井七段はほとんど取りこぼしがないのがすごい
――勝った後はどうしましたか?
近藤 ホテルに戻り、ネットでの自分の評判を見ました。驚くくらい反響があり、僕の名前がツイッターのトレンドランキング2位になっていました。いつもはエゴサーチをすることはありませんが、その時は、どんなものか気になって……。
――確かに、藤井七段との対局で近藤七段の知名度が上がりましたね。藤井七段の将棋の特長はどんなところでしょう?
近藤 ミスが全体的に少ないです。終盤、持ち時間がなくても、疲れの出る夜戦に入っても大きなミスをしないことに関してずば抜けています。また、自分は格上の棋士に勝つこともあるけれど、各棋戦の予選の初戦で負けるようなこともちょくちょくあったり、取りこぼしというか、順位戦以外は安定感がありません。藤井七段はほとんど取りこぼしがないのがすごいと思います。