「男子の中に女子1人」ジャンルでも異色
連載開始時、私は中高一貫女子校に入りたての13歳。「りぼん」「なかよし」「ちゃお」を経て、小学校高学年から隔週発売の「花とゆめ」を毎号購読していたが、中学受験が終わって時間にもおこづかいにも余裕ができたところで、少しお姉さん向けレーベルである月刊の「LaLa」も購読するようになった(ちなみにコミックスのレーベルはLaLa作品も「花とゆめコミックス」)。
キレのあるギャグ、テンポのいいストーリー、華やかなイラストもさることながら、オタクとしての自意識が根付きだした中学生の好みにジャストフィットする、いい意味で誇張されたイケメンキャラクターたち。どれもツボにはまったが何より好きだったのは、6人のイケメン達それぞれとフラグを立てそうになりながらも、「自分って男とか女とかの意識が人より低いらしいんですよね」と言い放ち、どこまでも飄々とした態度で、指名客女子を増やしていくサバサバした主人公のハルヒだ。
「男子の中に女子が!」という建てつけ自体は、ホスト部以前から、少女漫画では人気のジャンルだった。白泉社作品でも、その手前に、ドラマ化もされた人気作『花ざかりの君たちへ』(中条比紗也)や、主人公が男装してモデルにチャレンジする『ネバギバ!』(武藤啓)などがあったし、逆に、女子生徒として役者を目指す男性キャラに女性主人公が協力する『Wジュリエット』(絵夢羅)という作品もあった。
どれも、ジェンダーの撹乱によるハプニングと、キャラクター・ストーリーの魅力を持ち合わせた良作だけれど、そのあとにやってきた「ホスト部」が私にとってずば抜けた引力を持っていたのは、ひとえに「ハルヒは女であることをそれほど隠していない」という設定にあった。
「女の子に騒がれるのは悪い気はしない事が判明しました」
たしかに「ホスト部」という建てつけ自体は、巷のホストクラブよろしく「男性が女性をおもてなしする」体裁をとっており、部長である須王環は、ハルヒのことを「男だと思って」引き込む。しかし、ハルヒが女であることはすぐに明らかになるし、そもそも桜蘭学院は共学校なので、ハルヒの学生証には嘘偽りなく「女」と記載されている。
ハルヒは、借金というきっかけはあるものの、かなえたい切実な目的があって周囲をだまそうと性別を偽るのではない。父親のお古の私服に、野暮ったいメガネ、ボサボサの短髪という、自分にとって飾らない姿でいたら男だと勘違いされ、その流れで「女の子に騒がれるのは悪い気はしない事が判明しました」と相当ライトな気持ちで、ホスト部の面々にまじるのだ。もちろんホスト部活動をするのでわざわざ女だとは公言しないのだが、「男らしく」するからではなく、ハルヒ本人のナチュラルなふるまいがホストとしての人気をも支えていくのである。