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栃木は県に一人しかいないのに……

――先日、棋士会のYouTubeで、糸谷先生と共演されていましたね。

武富 いやもう恐れ多いのですが、ほんとに3年前まではサインをもらっていたんですよ。今でもそれを忘れちゃダメ、麻痺しちゃダメだって、自分に言い聞かせているんですけど。私は棋士の先生がいるだけでびっくりなんですよ。今までお会いしたことのある先生もあまりいなくって……。なにもかもが新鮮です。

長谷部 その気持ちめちゃくちゃわかります。以前、蒲田の将棋クラブに行ったときに棋士がいっぱいいるんで……。

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武富 びっくりしますよね。

長谷部 はい。栃木は県に一人しかいないのに、この中だけで何人いるんだって(笑)。

長谷部浩平四段

黒田 指導対局を受けても、大抵は一人か二人で来られることが多かったので、多人数の先生を一度に目にする機会というのはほとんどありませんでしたね。奨励会で将棋会館に行くようになって、多くの先生が棋士室で練習将棋を指している風景はとても新鮮に感じました。

武富 実際にプロの先生がいても、お名前がわからないときってありませんか?

長谷部 ああ、名前をあまり存じ上げないというか。

武富 棋譜とかで名前は知っていても、写真は昔の将棋年鑑とかでしか知らなくて。将棋会館のエレベーターで一緒になっても、事務の方なのか、棋士の方なのかわからなくてどなただったかな……って思っていたら、研修会指導をされる先生だったりすることがあります(笑)。

自分の将棋は独特かなと思います

色紙に揮毫する長谷部浩平四段

――将棋の面でも東京の棋士とは違いを感じますか?

長谷部 地方にいると戦法とか戦術の面で情報が少ないので、私は独自の戦法をやることが多かったですね。奨励会時代、横歩取りとか角換わりの最先端の将棋の情報に遅れているという自覚があったので、それとは違うことをやろうとしていました。

――たとえばどういう戦法ですか?

長谷部 矢倉で古い形にしてみたりとか……。そう、古い棋譜をたくさん並べていましたね。今はAIがあって状況が違うんですけど、少し前は最先端の研究は、東京にいる人にどうしても遅れていました。あとVSなど、実際に対局して教えていただくこともなかったですね。ただ今は自分もちょっと変わっていこうと、東京に行って教えていただいたりしています。

黒田 都会の方は、研究会などで将棋を指して感想戦で情報を共有しあう形が一般的だと思いますが、地方にいる私の場合、実戦はネット将棋がメインです。ネット将棋だと終局後の感想戦もなかなかできないので、一般の棋士の方とは感覚が違うかな、自分の将棋は独特かなとは思っています。

出身地を書く欄に「栃木」って書いたら……

 ネット将棋が将棋の勉強の中心だったと語る黒田さん。長谷部さんも武富さんも、やはりネット将棋は、強くなるためのツールとして愛用していたそうで、その使い方の、ちょっとした「地方あるある」を話してくれた。

長谷部 私もけっこう「将棋クラブ24」というネット将棋で指していましたが、出身地を書く欄に「栃木」って書いたらすぐに僕だってバレました。

――栃木でこんなに強いのは一人しかいないって(笑)。

武富 ははは(笑)。私も佐賀にいたときはほとんどネット将棋でした。最初、設定が全然わからずに、「武富 佐賀」にしていましたね。レーティングを400点から1600点くらいにして、そこからアカウントを作り直したんですけど。

――じゃあ、24に出身地を書くと素性がバレるというのは、地方棋士あるあるですか?

武富 そうですね(笑)。

黒田 すぐにバレてしまうので、私は出身地を書かなかったですね(笑)。