ずっとお父さんみたいだった中田功八段
――黒田さんの師匠は、畠山鎮八段ですが、これはどういったご縁なのでしょうか。
黒田 ちょうど奨励会を受けようと思っていたとき師匠が松山に来られて、お話しする機会があったのでお願いしたんです。そのときに指導対局をしていただき、「これなら大丈夫」と言ってもらいました。
――兄弟子の斎藤慎太郎八段は、やはり優しい方ですか?
黒田 なかなかお会いする機会はないんですが、将棋の面でも人柄の面でも、すべてにおいて憧れの兄弟子という感じです。いつか公式戦で当たるのを目標にしています。
――武富さんの師匠は、福岡県在住の中田功八段ですが、やはり同じ九州というご縁でしょうか。
武富 小学3年生のときに、佐賀で行われた大会のゲストに中田先生が来られていました。私だけ女の子で目立っていたので声をかけていただいて、先生がご自宅で道場をやっておられたので「来ない?」と誘っていただたいたのがご縁の始まりですね。それから今の師匠にずっと将棋を教えていただいています。
――では、ずいぶんと長いお付き合いですね。
武富 ずっとお父さんみたいな感じでした。それで中学3年のとき、研修会に入るため師匠になってくださいと両親とお願いに行ったんですが、このとき厳しかったんですよ。「本当なの? 覚悟あるの?」「本当なら、すごく頑張らないとダメだよ。楽しいだけじゃやれないよ」と言われて。それまでは優しいばかりでしたが、師匠になってからは厳しい一面も少なくありませんね。
――兄弟子の佐藤天彦九段は優しいですか?
武富 本当に優しいです。というよりも紳士すぎて恐れ多い感じですね。みなさんが思われる天彦先生のままです(笑)。
プロ棋士は、勝つことが最大の恩返しとなる
最後にこれからの目標をお聞きしたところ、みなさんが口を揃えて同じようなことを話したのがとても印象的だった。
黒田さんは、地元の愛媛県で活動したいという気持ちはあるけれど、本当は地元に戻る暇もないくらいに活躍したい。大阪に住んでいないと対局に支障が出るくらいに勝ちたいと。
武富さんは、ここ数年、大学進学を経て、いろんな経験を積むなかで何が大切かという優先順位がわかった。地元の普及も大切だけど、何よりの恩返しは対局で勝つこと。その優先順位を曲げずに頑張りたいと。
長谷部さんも地元の支部の方々に「普及は僕たちでもできるけど、対局で勝つのは君にしかできない」と言われている。だからしっかり結果を出せるように頑張りたい――と口にされた。
棋士が少ない県から、見事、プロになるという夢を叶えた3人は、もうその余韻に浸ることなく、次の目標をしっかり見定めていた。
対局で勝って恩返しをする。
プロ棋士は、勝つことが最大の恩返しとなる存在なのだろう。
その恩返しへの道筋が、これからどのようにたどられていくのか、ぜひ注目したい。そして地元の方々には、恩返ししたいとがんばる若い棋士・女流棋士をいっそう応援してもらえたらと思うのだ。