多分、相手は知らないと思うのですが……
――ネット将棋がなかったらプロになれなかったと感じますか?
黒田 ネット将棋がなかったら実戦を指す機会はなかったと思うので、相当ハンデは大きかったかなと思います。ネット将棋では本田奎五段とか山本博志四段とは相当指しています。おそらく今までいちばん指した相手な気がします。こちらが一方的に相手のアカウントを知っていて、多分、相手は知らないと思うのですが……。
――本田五段は、黒田さんとそんなに指したことを知らない?
黒田 実際にお話ししたことがないのでわからないのですが、多分、知らないと思います。
――山本四段は、いくら名前を工夫しても、三間飛車しか指さないので戦法ですぐにバレちゃうと、ご本人もツイッターでおっしゃっていました(笑)。
武富 ふふふ。
――以前、山根ことみさん(女流二段)が「愛媛では黒田さんが唯一の相手だった」とインタビューで答えておられましたが、山根さんともかなり指しましたか?
黒田 小学生の頃から同じ将棋道場に通っていて高校も同じで彼女がひとつ下です。山根さんはあまりネット将棋を指さないので、山根さんから見れば、自分がいちばん指している相手になるかもしれません。
武富 山根さんには、女流棋士になったときから良くしていただいています。先輩なので恐れ多いですが、同じ地方出身ということも関係あるのか、すごく波長が合ってお仕事でご一緒するときはいつも楽しい。最初にお話ししたときは、「けん」という方言が通じることにお互い喜んでいました(笑)。
――長谷部さんはいちばん指した人は誰ですか?
長谷部 地元の道場で、奨励会に一緒に行った人ですかね。
武富 私は圧倒的に兄ですね。
――武富さんのお兄さんは、強いんですよね。
武富 アマ三段なんですが、県代表になって全国ベスト8にもなっているので、実際はもうちょっとあると思います。中学3年生くらいまで、土日は、朝から晩までお菓子をかけて指していました。いまでも社会人として指していますが、私の将棋にはあまり興味がないらしく、何か言われることはないですね(笑)。
「師匠は誰にするの?」と聞かれたんですよ
この座談会で何度も話題にあがったのが、地方ゆえの対局相手を探す難しさ。こういった難しさは、師匠を探すことにもあるのだろうか。そんな師匠との出会いについて話していただいた。
長谷部 師匠(大平武洋六段)は研修会の幹事をしていたのですが、研修会のお弁当を変えたり、朝の開始時間が早いので遅くしたりと、いろんな合理的な改革を行ったんですよ。研修会の持ち時間も当時45分でしたが、これを使い切る研修会員ってほとんどいないので30分に変えたりして、すごいなと思うようになりました。それから将棋を見てみると、受け将棋なんですけど切れ味が鋭く、師匠をお願いしたいなと思うようになりました。
――どういう風にお願いしたんですか?
長谷部 師匠に「奨励会試験受けるの?」って言われて「受けます」って答えたとき、「師匠は誰にするの?」と聞かれたんですよ。このとき師匠はこちらの気持ちがわかっていたようで、僕が緊張して黙っていたら「師匠、俺でいいの?」って聞いてくれたんです(笑)。それで僕がうなずいた感じですね。
武富 恋愛みたいですね(笑)。
長谷部 僕はこのこと覚えてなかったんですけど、師匠が覚えていてくれて嬉しかったです。