(4)「産業道路駅」→「大師橋駅」

 大師橋駅は京急川崎駅で本線から分かれて多摩川右岸を東に向かう大師線の駅だ。大師線というと、京急の各路線の中でも最も古い歴史を持ち、ご存知川崎大師への参詣路線として有名である。名刹へのアクセスを担うということで静謐で品のある路線と言いたいところだが、沿線の雰囲気は必ずしもそうではない。京急川崎駅と隣の港町駅の間、堀之内には風俗街。港町駅の近くには川崎競馬場が鎮座して、その南には川崎競輪場もある。

最後に訪れた「大師橋駅」。「産業道路駅」から改名した理由は?

 こういうオトナの町が連なるのにはもちろん理由があり、大師線に乗って川崎大師最寄りの川崎大師駅を通り過ぎ、終点の小島新田駅に向かうとそこは京浜工業地帯の中心地。工業地帯で働く人たちが遊ぶ町、それが大師線沿線だったのだ。

「大師橋駅」になる“きっかけ”の工事とは

 で、その工業地帯を南北に貫き、ひっきりなしにトラックが行き交う通りがその名も産業道路。多摩川を大師橋で渡って京急大師線とも交差して工業地帯を南に走る。そしてこの道に接する場所にある大師橋駅は、通りの名をとって3月までは「産業道路駅」を名乗っていた。まさに工業地帯を象徴する駅名だったのである。

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工業地帯を南北に貫く産業道路(右)。大師線は交通量の極めて多いこの道路と長らく平面交差だった。2019年春に線路は地下化された
地下化工事が行われた線路。今でも名残が確認できる

 ただ、大師線はこの交通量の極めて多い産業道路と長らく平面交差だった。つまりは踏切があるわけで、運転本数が少ないから開かずの踏切とまではいかなくとも産業道路の交通量からすれば間違いなく渋滞の大きな要因になってしまう。