もし首相が「憲法9条を変える」と突き進んだら……
公明党代表の山口那津男さんという人は、本当に優れた政治家だと思うのですよ。控えめで、自民党ができないことをやり、丁寧に政策をフォローしながら自民党が猛り狂わないよう水をかける役割をしっかりと果たす。今後中国との関係が冷却化していく中で、二階俊博さんらとともに数少ない日中政治人脈の一角を担うのも山口さんです。
ところが、ここで安倍晋三さんが「改憲だ。憲法9条を変えるんや」と決意を固めて突き進まれると公明党は厳しい決断を迫られることになります。まあ、正面突破されたら、公明党は与党にはいられないのではないかと思います。安倍さんからすれば、改憲勢力さえ確保できればいいとなれば、それこそ維新の会との野合を目指して東京1区に自民公認で橋下徹さんを立てることぐらい平気で検討すると思うんですよ。与謝野馨さんが泉下で何を思うでしょうか。
この記事が出るころには東京都知事選で小池百合子さんが馬鹿勝ちしてるでしょうが、彼女こそ、日本初の女性首相を虎視眈々と狙っていつでも都知事職などぶん投げて国政に復帰しようとするでしょう。小池百合子さんの自民党への帰還とかいうロードオブザリングかよと思うような事件は容易に予想できます。
本格的な冷戦の始まりに向けて、日本が決断すべきことは
米中対立が先鋭化するほどに、再び冷戦の最前線となる日本が取るべき道はきちんと自力で武装した普通の国なのだ、と自民党タカ派の重鎮たちが言い始めるのは間違いありません。そして、秋に衆院選があるならば、中国を仮想敵とした敵基地先制攻撃能力についての安保議論や改憲に向けての動きは自公連立政権として選挙に勝った後の話になる。自民党を選挙で勝たせた公明党が、その後に起きるであろうこれらの「飲めない議論」に付き合わされるというシュールな展開になること必至です。
やはり、時代は本格的な冷戦の始まりに向けて、コップの中の平和国家・日本の地政学的な現実の前に戸惑いながらも決断しなければならなくなるのです。たとえ安倍政権の支持率は落ち、お友達補佐官に囲まれた専横著しい腐敗した政権だと批判されようとも、本気で安倍さんが改憲に打って出るならば、真面目に改憲のための国民投票ぐらいまでは駒を進めて、衰退が運命づけられているこれからの日本を占うキッカケになるのでしょうか。
実現しなかった東京オリンピックをみんなでひっそりと葬送しながら。
さようなら、オリンピック。
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