冷静沈着な第七世代の芸人たち
「第七世代」と呼ばれる若手芸人たちは、実に冷静に現在の状況を捉えている。2019年に私が取材した中でも、その片鱗が垣間見えた。
霜降り明星・せいやは「一回真ん中みたいなポジションになった番組(『AI-TV』)が終わると、まだ売れてないのに『あ、アイツら終わった』みたいな扱いを受けるってよう言われた」「それがメッチャ怖かった」と語り、その危機感からM-1グランプリに向けての意気込みが増したことを明かしている。
また、宮下草薙・宮下兼史鷹は「僕らの少し前の世代で、面白い芸人さんたちがライブシーンにたくさん埋もれているし。そういう現状を見ると、タイミング的にはすごいラッキーだった」とテレビ出演前の過去を述懐した。また、ハナコ・岡部大は、2017年の『NHK新人お笑い大賞』で惨敗し、『ABCお笑いグランプリ』で霜降り明星が優勝するのを目の前で見たことで、「一回打ち砕かれて火がついた」と語っていた。
さらに今年1月、吉本興業の最新ニュースを発信するメディア「ラフ&ピース ニュースマガジン」のインタビューでEXIT・兼近大樹は「(今後は)たぶん確実にキャラ変わると思います」「今イケメンキャラみたいになってるけど、そんなやつじゃないんで」と赤裸々に告白している。
彼らに共通するのは、早くから自分自身を客観視できていることだ。それは、実際の失敗経験だけでなく、幼少期や学生の頃に『エンタの神様』(日本テレビ系)を見てきた世代ということも関係しているように思う。そこで、“一発屋”と呼ばれる芸人の栄枯盛衰をさんざん目にしてきたはずだからだ。
テレビとは別にYouTubeやTikTokでバズれば人気に火がつくこと、SNSを使用することで自己プロデュースができることも把握している世代だ。実に多くの情報から、自分たちらしいものを選択しているのである。