今期いちばん興味を唆られるドラマが『MIU404』だ。いまノリに乗っている野木亜紀子のオリジナル脚本だから、期待は高まるばかりである。

 それにしてもホロ苦くもユーモアとペーソスあふれる佳作『コタキ兄弟と四苦八苦』の次に警察ドラマに挑戦するとはね。お、こうきたか。意欲的な人です。

 番宣でも“脚本・野木亜紀子!”と大きく謳ったものを見た。大体のコピーは“あの『逃げ恥』の星野源と野木亜紀子が再びタッグを組む”だけど、やはり私としては、野木が星野源と綾野剛で、どんな警察ドラマの新境地を拓くのか、関心はその一点だ。

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星野源  ©文藝春秋

 恋愛、サスペンス。何を描いても新境地を切り拓いてきた野木だ。ただ視聴率を取りにいくだけなら、『逃げ恥』の続篇を作ればいいだけだが、そんな安直な逃げはみせない。

 MIUは“機動捜査隊”を意味する英語の頭文字なんだって。「ミュウ・ヨンマルヨン」。これが番組タイトルの読みだという。

 警視庁が働き方改革の一環として、これまでの三つの機動捜査隊に加えて、四番目の機動捜査隊も作ることになり、これが略称・四機捜である。

 しかし実態はといえば“美人すぎる隊長”桔梗(ききょう)ゆづる(麻生久美子)を前面に立てた“やってますよ感”をアピールするための部署で、カネも権限も、ほぼ無いに等しい。一機捜から三機捜までのヘルプ仕事に加え、捜査一課などの手助けもしなくてはならない。

 メンバーも四人だけ。とりわけ志摩一未(星野源)と伊吹藍(綾野剛)の二人は訳あり刑事だ。

綾野剛 ©文藝春秋

 志摩は捜査一課のエリート刑事なのに、なぜか四機捜に飛ばされた謎がある。伊吹は直情型の熱血漢というか肉体派で、幾つも部署を転属され、四機捜に来るまでは奥多摩の交番勤務だった。志摩が同僚だった連中に訊いても「脚だけは早かった」と誰もが嫌そうに印象を語る。

 そんな二人がバディを組まされた。クールで聡明な知性派刑事(デカ)の志摩は、直観に頼り暴走癖のある伊吹を最初は嫌悪し、見下していた。俺は他人も信じないし自分も信じない。志摩はそれが口癖だ。

 だから星野源は劇中で笑わない。「捜査一課のときに相棒を殺した」という噂まで流れている。ニコリともしない志摩にジャレついて笑って甘える伊吹を演じる綾野剛は愛嬌満点だ。

「いい人じゃない星野源を見たい」。これが野木の狙いだったという。

 人情味あふれる回もあったし、「俺たち、いい相棒になれそうじゃん」と綾野がなつくまでに、二人の距離も縮まった。こうなれば、あとは不気味なサスペンスの風味を何滴か垂らせば、MIUがいよいよ本格的に動きだす。

INFORMATION

『MIU404』
TBS系 金 22:00~
https://www.tbs.co.jp/MIU404_TBS/