“宿敵”スタン・ハンセンを美々卯へ招待
そして3年前には、“宿敵”との旧交を温める場所にもなった。
「2017年の10月に、スタン・ハンセンと東京でトークショーをやったんですよ。終了後は一緒にメシを食うことになってたから、開場からそう遠くなく、周囲のお客さんの視線を気にしないで気楽にコミュニケーションが取れる個室があって、スタンの喜びそうなところって考えたら、あっ、美々卯の渋谷マークシティ店だって」
プロレスファンには周知の事実だが、天龍氏とハンセンには40年来の親交がある。
「俺がアメリカ修業に出ていた頃、スタンはすでに新日本の外国人エース。だけど日本に親しみを持っていたせいか、一緒にアメリカの地方サーキットを回っていたりすると、何かと日本人の俺を気にかけてくれてたんです。そのうちよく話もするようになり、ある時『今度ジャパニーズフードを食べさせてやるよ』って、当時向こうで借りてた家に彼を招待して、2日ぐらい煮込んだ手製のカレーをごちそうしたら、うまいうまいってペロッと平らげてた。ほかにも、彼のピックアップトラックに同乗させてもらってアメリカの会場間を移動している最中、急に豪雨が降ってきたもんだから、荷台に積んでた俺たちの試合道具が濡れないよう、2人で慌てて幌をかけたなんてしっちゃかめっちゃかな思い出もありますよ」
「デリシャス」とか「ゴージャス」とか言ってました
帰国後の天龍氏は全日本の看板選手へと駆け上り、同じ全日本へ移籍してきていたハンセンと数々の死闘を繰り返す。
「お互い全日本の主戦として戦うようになってからは、試合場で顔を合わせるだけで交流はなかったんだけど、スタンの引退後は彼が日本へ来た時なんか、たまにメシを食ったり。彼が膝を手術したと風の噂に聞いたら『元気かな』とすごく気になるし、彼も来日したら『天龍は元気にしてるか』と、周りの人に尋ねたりしているらしい。そんな仲になれた外国人レスラーは、スタンぐらいです。現役時代、必死になってバチバチやりあったからこその関係なんじゃないかな」
そのハンセンに渋谷マークシティ店で振る舞ったのは、うどんすきも含まれるコースだった。
「彼は来日回数が多いし奥さんも日本人だから、和食は大好物。刺身もまったく抵抗なくて、一品一品出てくるたびに『デリシャス』とか『ゴージャス』とか言ってました。締めにうどんすきが出てくると、アメリカ人なのに『出汁がおいしい』ってばくばく食ってた。うどんすきってちょっと地味なイメージなんだけど、鶏肉とか海老とか穴子とか具が豊富に入ってるし、味わいが深いから、ぐっとテンションが上がるんだよね」