町田 2019年6月に、5年に一度という動物愛護法の改正がありましたね。
友森 はい。一応「前進した」といわれています。でも不思議な現象があったんですよ。8週齢規制が正式に認められましたけど、決定寸前になって「日本犬6種は例外とする」という一文が添えられました。「8週齢規制」というのは「生後8週齢に満たない動物を販売してはいけない」という規則です。
犬や猫は、最低でも生まれて8週間は母親や兄弟たちと過ごす必要があります。その間に免疫ができて精神的にも落ち着き、心身の安定した動物に育つからです。生後8週間が、動物の一生、ひいてはその飼い主の生活にも大きな影響を与える。だから、とても大切な法案で、成立させるべく私たちは長年活動し、審議されてきました。
そして、ようやく決まろうとしたそのときになって「日本犬6種は例外とする」って。本当に驚きました。愛護活動をするようになって、このような政治の不思議さを目の当たりにするようになりました。政治には特別な人脈とか、普通の人にはわからない筋道とか近道とか、ミラクルがあるんですよね。
日本人はかわいい子犬や子猫が好き
町田 ミラクルのツボね。そもそも日本では「ペットを飼いたい」と思うと、だいたいペットショップに行きますね。「愛護団体や愛護センターの譲渡会に行く」という選択肢もあるのに。しかも子犬子猫を欲しがるし。
友森 海外の人にその話をすると「信じられない!」と言われます。「パピーは手がかかって大変だ」という常識をちゃんと知っているので。日本では「かわいい!」だけで犬や猫を迎えますから、ペットショップにすれば犬や猫は小さければ小さいほど価値がある。
ペットショップをお客のフリをして回ってみると、「小さくても大丈夫ですよ」「仕事されているならフードと水を置いておけばいいですよ」って、店員さんの売り方も本当にひどい。8週齢規制の法改正に20年かかった理由がそこにあるんですよ。
町田 みんな「小さければコントロールできる」と考えるようですね。懐きやすいとかしつけしやすいとか、安易に思うんですね。
友森 でも、その分、ちゃんとしつけをしないと良くないこともすぐ覚えます。
町田 噛み犬、吠え犬になるゆえん。
友森 それで手に負えなくなってトレーナーさんのところに預けっぱなしにしてしまったり。そして結果的に飼育放棄するんです。
町田 そんなことが実例として多いんですね。
友森 今回の法改正では、虐待に対しての罰金額が200万円から500万円に上がりました。でも、日本は虐待の基準が曖昧だから、大量に殺傷したとか、極端でないと検挙されません。本来なら劣悪な環境での多頭飼い飼育だって虐待、無知によるネグレクトです。
海外では「水のみボウルの中に何センチ以上水が入ってないといけない」とか「10時間以上留守番させるのは虐待とみなす」とか、基準がしっかり数値化されています。この法律改正の真価を見きわめるために、今後500万円の罰金を支払う人が出てくるのかをしっかり注視するつもりです。