名前を聞いたことはあっても、何をしているか分からない謎めいた政府の機関──それが内閣情報調査室(内調)のイメージではないでしょうか。近年、内調に関する本の出版が続いたり、内調と戦う新聞記者を描いた映画『新聞記者』(原案/望月衣塑子、河村光庸)がヒットしたり、ちょっとした内調ブームになっています。
情報を握り、政府の秘密を守る「内調」
背景には官邸機能の強化があります。特に内閣官房内に設置された内調は、室長が内閣情報官に格上げされる、情報衛星からの情報を一手に管理する、特定秘密保護法の運用上の権限を持つ、重要情報が外部に漏出するのを阻止するカウンターインテリジェンス・センターや国際テロ情報集約室を内部に設置するなど、その機能がどんどん拡充されたことで存在が目立ち始め、人々の関心を引くようになりました。
情報を握り、政府の秘密を守り、官房機密費が活動費に充てられる……。謀略、スパイなどの単語が容易に浮かび危険視されて当然かもしれません。
そもそもこの組織は創成期からマスコミの関心が高く、第三次吉田茂第三次改造内閣の1952年に内閣総理大臣官房調査室としてスタートした際はまだ戦争が影を落とす時代でした。再び戦前・戦中のような国家の情報統制や謀略が始まるのではないかと警戒するメディアやジャーナリストが少なくなかったのです。例えば読売新聞は言論統制の恐れがあると主張するキャンペーンを張りました。