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わたしの「神回」

2020/08/20

 そして93年『あすなろ白書』、94年『若者のすべて』ときて、96年に初めて主演したのが『ロングバケーション』である。

 翌年の『ラブジェネレーション』も含め2年連続の月9ドラマで人気は爆発。2000年1月期にはドラマ『Beautiful Life ~ふたりでいた日々~』で平均視聴率32.3%、最高視聴率41.3%を記録した年の冬に結婚発表。そして、結婚を挟んで人気が衰えないか心配された矢先の、2001年の『HERO』。11話全てが30%超えは日本の連ドラ史上唯一の快挙だ。

劇場版『HERO』で釜山国際映画祭を訪れた木村拓哉

番外編)木村拓哉×超人気歌姫のレアなコラボ 『TV's HIGH』最終回

 そんな『HERO』と同時期に放送されながら、いや同時期だったからなのか、大きな注目は集めなかったものの、木村拓哉だから成立したとも言える快作がある。それが、『TV's HIGH』。スタッフの笑い声も入るコントバラエティとも言えるが、テレビドラマ仕立てになっており、ここで木村拓哉が演じるのは木村拓哉本人。

「君ばっかり出演する番組を作れば……高視聴率とる番組ができるんじゃないかと思ってね」とやってくる元都知事・青島幸男ほか怪しい人々に囲まれ、ひとりでテレビ局を開局し、視聴率80%を目指すというもの。画面に向かって話しかける手法や“個人チャンネル”という発想はYouTuber時代を10年以上早く予見していたともいえる。

 その先見性のある企画に、尖った笑いを加味するのがこの番組の構成作家陣。『SMAP×SMAP』でも組んでいた鈴木おさむに加え、『時効警察』などの大人気ドラマシリーズを手掛ける前の三木聡、『池袋ウエストゲートパーク』で注目を浴びた直後の宮藤官九郎が名を連ねる。その後のドラマを引っ張っていく面々がこの木村拓哉のおもしろ企画のもとに集っていたのである。特に三木聡と宮藤官九郎という異才と木村拓哉のコラボレーションは貴重だ。

宮藤官九郎 ©文藝春秋

 才能のもとには才能が集まる。さらに、これは人気ジャニーズタレントに共通して言えることだが、木村拓哉という大スターがいることである程度の商業的な成功は固いので、企画自体を尖らせることができるのである。結果、他では見られないような内容が成立する。

 その象徴が最終回の宇多田ヒカル登場回である。

 1998年のデビューから2年。当時ほとんどテレビに出ていなかった宇多田ヒカルが、音楽番組ではないこの番組に出演するのはちょっとした奇跡だった。YOUと宇多田ヒカルが入れ替わった、という設定で、ボケる宇多田ヒカルに木村拓哉がツッコミ続ける。

「(木村拓哉と宇多田ヒカルという)スター2人が並べば視聴率が取れるんだろう?」というテレビ業界への揶揄のようなものまで含まれ、批評性の高い番組の締めくくりを飾るに相応しい回となった。