“不景気に強い”はずが…東京の立ち食いそば「閉店ラッシュ」　都内人気5店の“戦い方”とは？

立ち食いそば屋のない東京なんて……

　コロナ禍の2020年夏、駆け足的に都心の冷がけそばを食べながら、苦難と戦っている大衆そば・立ち食いそば屋を点描してみた。失念していたが、新宿西口の立ち食いコーナーのある「永坂更科布屋太兵衛 新宿地下鉄ビル店」も再開発により閉店するという悲しい話が入ってきた。

　自分が食べるようになってから、大衆そば・立ち食いそば屋がこれほど雪崩のように閉店することは今までなかった。不況に強いと思っていただけに、かなりショックである。あと1年も経つと、もっとたくさんの店が消えて行ってしまうのだろうか。立ち食いそば屋のない東京なんて、想像できないし、なんとなく味気ない。

　自分に何ができるかというような次元の話ではないと思う。ただ、どんなに小さなそば屋でも、その店に携わる人々の人生や夢や味があったわけで、我々はそれを日常食としてありがたく食べてきたわけである。そんな日常にあった小さなそば屋が街から消えていったとしても、その記憶だけはずっと残していきたいと考えている。

　取材後、オフィス街の小さな喫茶店のテラス席で一休みした。そこにはゴーヤが育てられていて、小さなゴーヤの実が2つ風に揺れていた。少しだけ癒された気がしたわけである。

　がんばれ大衆そば・立ち食いそば屋。「ひさご」に貼ってあったメッセージが心に沁みる。

写真＝坂崎仁紀