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 まず、AI技術[5]でモノクロ写真を「自動色付け」します。AIは、人肌・空・海・山など、自然物のカラー化が得意です。一方、衣服・乗り物などの人工物は苦手で、不自然さが残ります。

「自動色付け」は、あくまで「下色付け」です。次に、戦争体験者との対話・SNSで寄せられたコメント・資料などをもとに、手作業で色を補正していきます。この「色補正」は、とても手間のかかる地道な作業です。例えば、本書の表紙の「戦前の広島・本通り」の完成までには、数々月かかっています。

1945年4月12日。知覧飛行場にて。特攻に向かう穴澤利夫少尉の「隼」を見送る知覧高等女学校の生徒たち
1945年4月5日。沖縄・慶良間列島沖にて。護衛空母「サンガモン」に突入する「菊水五号」作戦の特攻機

 本書の『まえがき』に添えられた図は、1936年5月2日に撮影された「濵井理髪館」前の濵井德三さん・母イトヨさん[6]のモノクロ写真が、どのようにカラー化されていったのかをあらわしています。自動カラー化、対話を踏まえた色補正。そして再度の対話と、さらなる色補正……「カラー化」と「対話」は同時に進行していきます。そして、終わりはありません。

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1945年5月10日。アイダホ州ハントのミニドカ強制収容所から解放され、シアトルの自宅に戻った日系人の家族
1945年5月17日。沖縄・那覇で民家を破壊しながら進撃するアメリカ軍

『この世界の片隅に』片渕須直監督のアドバイスとは?

 AIが判断できない人工物の色は、対話の内容や資料をもとに修正します。SNSで寄せられた情報をもとに、色補正することもあります。たとえば、映画『この世界の片隅に』の片渕須直監督からは「きのこ雲」の色合いなど、さまざまなご指摘をツイッターでいただき、大いに参考になりました。片渕監督からは、本書の帯を飾るすばらしい推薦文も寄せられました。片渕監督をはじめ、貴重な知識をご提供いただいたみなさまに、深く感謝いたします。