まず、AI技術[5]でモノクロ写真を「自動色付け」します。AIは、人肌・空・海・山など、自然物のカラー化が得意です。一方、衣服・乗り物などの人工物は苦手で、不自然さが残ります。
「自動色付け」は、あくまで「下色付け」です。次に、戦争体験者との対話・SNSで寄せられたコメント・資料などをもとに、手作業で色を補正していきます。この「色補正」は、とても手間のかかる地道な作業です。例えば、本書の表紙の「戦前の広島・本通り」の完成までには、数々月かかっています。
本書の『まえがき』に添えられた図は、1936年5月2日に撮影された「濵井理髪館」前の濵井德三さん・母イトヨさん[6]のモノクロ写真が、どのようにカラー化されていったのかをあらわしています。自動カラー化、対話を踏まえた色補正。そして再度の対話と、さらなる色補正……「カラー化」と「対話」は同時に進行していきます。そして、終わりはありません。
『この世界の片隅に』片渕須直監督のアドバイスとは?
AIが判断できない人工物の色は、対話の内容や資料をもとに修正します。SNSで寄せられた情報をもとに、色補正することもあります。たとえば、映画『この世界の片隅に』の片渕須直監督からは「きのこ雲」の色合いなど、さまざまなご指摘をツイッターでいただき、大いに参考になりました。片渕監督からは、本書の帯を飾るすばらしい推薦文も寄せられました。片渕監督をはじめ、貴重な知識をご提供いただいたみなさまに、深く感謝いたします。