少しずつやってきてようやくここ10年ぐらいで、サウナとスパが世間にちゃんとした形で認知され始めました。今では、子育ての合間やお仕事帰りに立ち寄ってくださる女性のお客様もたくさんいます。この光景は昔では考えられなかった」
サウナブームが巻き起こるコロナ時代で“生き残るため”に
昨年、全館をリニューアル。働く女性をターゲットにした新しい取り組みを始めている『江戸遊』だが、サウナブームで施設がどんどん増える中、施設の多様化が進んでいると平井は言う。
「働く女性は年々増え続けています。“女性に優しいサウナ施設とはどうあるべきか”を社員たちと研究して、『湯work』というコワーキングスペースも実現させました。サウナ・スパの新しい利用価値です。
新しいお店が増えて、サウナ・温浴施設もどんどん多様化していますから、今はまだ考えもつかないような施設もでてくるかもしれませんね。すごく小さいサウナ室とか、仮想空間を使ったサウナ室とか(笑)。でも今は、どの店もコロナという未曾有の問題にどう立ち向かっていくかが課題です。『江戸遊』もこれまで25年間、実際に倒れそうなことや苦しいことは何度もありました。様々な試練を乗り越えてきたので不景気には強いつもりだったんですが、コロナ禍はひたすら辛抱するしかないありません。事業を続けていくことは大変なことだと痛感する日々ですが、それでも『やってよかったな』と思うことも、何度もあります。
私は、『自分が遺したものがこの先、生き残るだけの存在価値があるものであってほしい』と思いながら、これからも仕事をしていこうと思います」
常に時代を見抜く平井の慧眼。決して現状に満足しないその姿勢。そこには、幾多の苦難を乗り越えた者にだけしか紡げない、言葉の重みがあった。
コロナ禍で一気に進んだ新しい生活様式では、在宅時間も増えストレスや疲労、病など今まで以上に身体のメンテナンスへの重要性が増してくるだろう。だからこそ、心身ともに疲れを癒してくれる『両国湯屋 江戸遊』の存在は、我々にとって必要不可欠な“現代の駆け込み寺”といっても過言ではない。
そして平井社長は、優しく微笑みかけてくれる下町のジャンヌ・ダルクなのである。