昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

2020/09/01

 もちろん、ソーシャルディスタンスを守るとか、離れて座ってもらうとか、エタノールで手を消毒してもらうなどの感染予防の対策は行っているが、それ以外で、出前やテイクアウトを始めたり、値引きセールなどをやることは考えなかったそうだ。

「うちは住宅街が近いから、ご近所さんが在宅勤務になり、久しぶりに来店してくれたり、そのひとたちがリピートしてくれたりしています。そういったお客さんに丁寧にいつも通りのそばを提供しています。出前やテイクアウトをすると、そういうお客さんを待たしてしまうことになるし、密になるので、やっていません」と岩田さんはいう。

「立地によってそば屋の“戦略”は異なるのだ」

 近隣の顧客にしっかりと丁寧にそばを淡々と提供することで、売り上げ減をどうにか補おうというまさに初心に返ったような作戦である。つまり、立地によっておそば屋さんのとるべきコロナ対策は変化するということである。当たり前のようなことではあるが、なかなか深い話だ。

 正式な営業開始時間11時を過ぎると、さっそく年配の常連の夫婦1組が入店してきた。その1人が「天丼」と「せいろそば」を頼むと、岩田さんの奥さんが「あら、今日はミニ天丼じゃないの?」と気さくに話しかけている。「ああ、そうだ、そうだった。ミニにしてね」とすぐに照れ笑いで返事が来る。

 そば屋の緩い穏やかな時間が流れている。はやく、コロナが下火になり、また昔のような活気が戻って来てほしいものである。今度は、鮑そばを食べに来ることを約束し、店を後にした。

店内には穏やかな時間が流れていた
次は「鮑そば」にしようと思う、また来よう

写真=坂崎仁紀

INFORMATION

香取屋
住所:東京都大田区西蒲田7-11-4
営業時間:月~金・日 11:00~20:30(通常11時より少しはやく始まります)
定休日:土

この記事の写真(18枚)

+全表示

ツイッターをフォローして最新記事をいち早く読もう

文春オンラインをフォロー