1ページ目から読む
4/5ページ目

『のだめカンタービレ』大成功に反しバッシングを受けた上野

 ドラマは爆発的な成功を収めた。最終回の視聴率は20%を超え、指揮者が何度挨拶に立って頭を下げても鳴り止まないアンコールの拍手に応えるように、テレビドラマのスペシャル版、前後編に分かれた劇場映画などの特別編が次々と作られた。

 同時期に演じた『ラスト・フレンズ』で見せたまったく違うタイプの演技にも高い評価と多くの賞が贈られ、上野樹里は20代前半にして、国民的な人気と圧倒的な演技力を兼ね備えたトップ女優となった。

『のだめカンタービレ』主演の上野樹里

 だがネットを検索すれば、2011年に演じた大河ドラマ『江』の前後あたりから、上野樹里に対するバッシングの芸能記事が急増していた痕跡がわかる。その多くは「監督に対して演技についての異論を述べた」というような、なぜそれが批判されるのか理解できないような内容が大半だ。

ADVERTISEMENT

 日本のテレビドラマや映画への出演が減ったことは「干された」「消えた」と表現され、演技力が海を超えて評価され韓国のドラマに出演するようになり、「日本では(私生活で注目され)生きづらいと感じる瞬間もある」と語ったインタビューは例のごとく文脈を無視して「嫌なら日本に戻ってくるな」というネットのバッシングに晒された。

ドラマ『シークレット・メッセージ』ではT.O.P(BIGBANG)と共演 ©️getty

 今、上野樹里は『グッド・ドクター』『監察医 朝顔』などで再び高い評価を受け、何事もなかったかのように日本のトップ女優の1人に戻っている。彼女をバッシングし、干された消えたと書き立てたマスコミは「結婚して丸くなったのでしょう」といういかにも日本的なストーリーでその辻褄を合わせ、再び愛想笑いを浮かべている。 だが、おそらく上野樹里はいつも演技に真摯に向き合って意見を述べ、自分の私生活を守ってきただけなのではないか。

 原作『のだめカンタービレ』22巻168ページには「もう弾けない」という言葉を残して失踪した主人公のだめについて恩師シャルル・オクレールが語る言葉がある。「あの子は音楽は好きでも 基本的にこの業界が嫌いです」。それはまるで、「もう1人のリアルのだめ」上野樹里について語られた言葉のように聞こえる。