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金髪モヒカンの若者が「お前は、酒づくりをばかにしている」と言われた日

佐々木要太郎・インタビュー#2

2020/10/03

 岩手県遠野市にある一軒の小さなオーベルジュ「とおの屋 要」が世界中から注目を浴びている。内外のシェフや日本酒の蔵人、ソムリエら、ここ数年、見学者が絶えない。

 提供されるのは、自家製どぶろくと発酵料理。受け入れる客数は一日最大6名まで。

 つくり手は、佐々木要太郎、39歳 。

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型破りのどぶろく造り

どぶろくと果汁を合わせ醸した「どぶきゅ~る」 ©文藝春秋

 佐々木要太郎の酒蔵は、オーベルジュ「とおの屋 要」の裏手にある。どぶろくの原料は、自然栽培の自家米「遠野一号」。5本の琺瑯タンク内で熟成が進む。

 酵母は棲みつき。つまり、空気中を浮遊しているふつうの酵母だ。それが元気に繁殖するタイミングをひたすら待つ。

 通常、酒母は、30日ほどでつくられるが、佐々木の酒母は、200日を軽く超える。無農薬無肥料の田んぼの土が年を追うごとにどんどん地力をつけていて、そこで育つ米を健全に発酵させようとすると、どうしてもこれぐらいの日数がかかるのだ。

 佐々木のどぶろくは、こんなふうに一見、型破りだ。が、自然の法則に従ってまっとうに造ればそうなる、ということでもあるのだろう。

 それは、佐々木要太郎の人生とも重なる。虚飾を捨て、とことん根本を問い、本物を探し求める生き方。手間暇はかかるが、近道は佐々木の流儀に反しているのだ。