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リトルプレスならではの楽しみ全開。又吉直樹・書き下ろしアンソロジー『Perch』が出来るまで

又吉直樹×佐藤亜沙美×九龍ジョー×木村綾子

note

手づくり感のある本がつくれそうやと

又吉 九龍さんは当時、新聞社の出版部に所属しながら、自分でもリトルプレスをやっていらした。僕は芸人やし、お客さんに手の届くところでやりたいという気持ちがやっぱりあって。僕もそういうふうに構えておきたかったから、いろいろ質問させてもらったんです。そのタイミングで木村さんから話をいただいたんで、「おもしろそうやな」とすぐに思いました。手づくり感のある本がつくれそうやと。

©深野未季

木村 私は私で、書店の可能性はこれからますます広げられるんじゃないかと思っていて。又吉さんの表現の自由さ、読者との距離感、つねづねそこを見習いたいと思っていたので、いまこそそれを体現する試みができるんじゃないかと。

 又吉さんには以前から「木村さんは本を作れる人にもなっといたほうがいいと思いますよ」とアドバイスを頂いていて、今回も「実験の場所だと思って、編集もやってみたらどうですか?」とおっしゃってくださり、迷ったのですが……。

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 でも、限られた期間で又吉さんの本を作ることと、企画全体の指揮をトータルで考えなければならないと考えた時に、未経験の私が「あれもやるこれもやる」と欲張るのは危ういなと。そこで編集には、又吉さんも私も信頼を寄せている九龍さんに入って頂き、その仕事を学びたいと又吉さんに思いを伝えました。九龍さんにお声がけしたらすぐに意図を汲み取ってくれて、「明日、打ち合せしましょう」と。それが2019年の年末でしたね。

九龍 又吉直樹のミニコミを一緒に作ろうって誘われて、断る編集者はいないですよね(笑)。あと、又吉さんが木村さんに「自分でも本をつくれるようになったら」と言ったのがよくわかるというか、僕も同じようなことを思ってたんです。僕も、前々から木村さんは本をつくりたい人なんじゃないかと思ってたし、実際、本をつくるのって知識とか仕組み自体はそんな難しいことじゃないんですよ。それよりも重要なのは人対人の部分であって、そこは木村さんはすでにできてるわけで。なので、一度本づくりのプロセスを打ち合わせからメールのやりとりまでぜんぶシェアするので、一緒にやってみましょうよって背中を押しました。

©深野未季