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ぱっと読んでも俄にジャンル分けができないような原稿も多くて(笑)

佐藤 海外の古本屋でこの本がボロボロになって置いてあるイメージを九龍さんと話しました。いろいろな場所を旅して、いろいろな人の手に渡って、ある国の町の古本屋にたどり着く。経年も含めた存在であって欲しいなと。表紙については、個体差をつけるという意味で、必然的に、活版印刷にたどりつきました。

九龍 しかも、カバーの色紙を変えるだけで活版は1版だから、コストパフォーマンスもいいんですよ。

又吉 僕は最初の打ち合わせでイメージを伝えて、後はもう原稿に集中していました。〆切の目安をいただいて、書き上げたら木村さんと九龍さんに送るという繰り返しでした。

九龍 全体の構成については任せてもらえたので、飛行機に搭乗するところから始まって、フライトして、目的地の空港について、カートを引いて空港を出るっていう一連の体験を感じさせるような流れを意識しました。いちおう又吉さんとの打ち合わせで、短編小説が何本とか、エッセイが何本とか、だいたいの枠組は決めていたんですが、いざ届いてみたら、ぱっと読んでも俄にジャンル分けができないような原稿も多くて(笑)。

©深野未季

やり取りしているうちにどんどんカオスになって

又吉 原稿を送ったら、九龍さんから「これはエッセイ?」と返信があって、「それはまた別のやつです」と(笑)。

九龍 でも、そういう原稿がいちばんおもしろいんですよね。並べていくのは楽しい作業でした。ただ、印刷の折(単位)毎に紙を切り替えることを佐藤さんが決めていたから、原稿の量と内容と、紙に合わせたデザインのつじつまを合わせるのはけっこう大変でしたね。

佐藤 作品ごとに表情や手触りが違うので、書体も紙も変えています。いろんなものがギュッと入っている宝物のような本にしたかったんですけど、やり取りしているうちにどんどんカオスになって、折のことがふたりの間で崩壊しました(笑)。

九龍 一時、メールの文面なんかもけっこうピリッとして、緊張感ありましたよね(笑)。もちろんお互い信頼感があってのことではあるんですけど。

木村 メールのやりとりには私も入っていたんですが、ちょっと目を離したらすごい応酬になっていて……。ただならぬ気配に口を挟めませんでした(笑)。

九龍 本づくりのプロセスではよくあることなので、僕らは通常運転なんですけど、木村さんもやりとりをシェアしてるから、たぶん心配してるだろうなあと思ってました(笑)。