「持っているだけで楽しい本」を目指してつくられた『Perch(パーチ)』。アナログなテイストを大切に表紙は活版印刷、色も5種類。本文用紙には4種の紙を使用し、フォントも作品ごとに変えたという遊び心たっぷりのこの本は、どんな発想から生まれたのか?

 著者・又吉直樹さんに、思い切った装丁で大人気のブックデザイナー・佐藤亜沙美さん、編集者・九龍ジョーさん、企画・制作を担当された木村綾子さん、4人勢ぞろいでお話を伺いました。

左から九龍ジョーさん、木村綾子さん、又吉直樹さん、佐藤亜沙美さん ©深野未季

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お客さんにすぐ手が届くところでつくりたい

又吉 去年の暮れ頃やったかな。気ままに文章を書ける場所が欲しいなと思っていたタイミングで木村さんからお話をいただいたんです。

木村 そうなんです。私、今年から蔦屋書店と業務委託契約を結んだんですが、まず最初に、「2020年春に羽田空港第2ターミナルに国際線エリアが開かれる。その施設内、飛行機の離発着が望める場所に蔦屋書店ができるので、オープン企画を考えてほしい」という依頼を受けて。プレゼン資料のなかにあった「ここにしかない価値」という言葉を見た瞬間、胸が高鳴ると同時に又吉さんの顔が浮かんで、すぐにLINEを送りました。「一緒に本、つくりませんか? 『羽田空港 蔦屋書店』、その場所に行かなければ買えない本です」と。

©佐藤亜沙美

又吉 その日、僕は福岡にいたんですが、打ち上げで飲んで帰る道すがらそのLINEを見て「おもしろそうだな」と。

九龍 又吉さん、実は昨年後半ぐらいから、ずっとミニコミみたいなリトルプレス(小規模出版)に興味を持ってましたもんね。

又吉 九龍さんが編集を担当してくれた『人間』が発売された後(2019年)、挨拶のためによう本屋さんを回った時、移動中、「編集者の仕事ってどんなんですか?」とか、ずっと聞いていましたよね。

九龍 けっこう具体的でしたよね。当時、僕自身も『人間』みたいにある程度部数の大きな本を手掛けるのと同時に、『Didion』っていう個人雑誌や、ホストの同人誌、演劇公演のフリーペーパーなんかをつくってて、リトルプレスが面白いと思ってたんです。印刷も凝れたりするし。それで又吉さんにも、「編集者なんか入れないで、少部数の本を自分でつくったらおもしろいんじゃない?」ってそそのかしたりしてて(笑)。