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スタンプで、その日その場所にいた記録を刻む

木村 本を購入した時に、お店でスタンプを押せるようにしようというアイデアは又吉さんからでしたよね。

又吉 今年の正月に、旅行先のパリの町で小さな書店「シェイクスピア・アンド・カンパニー」に行った時、本を買ったら日付を入れたお店のスタンプを押してくれたんですよ。それが嬉しくて、是非『Perch』でもできたらと思ったんです。

©深野未季

木村 ずっとイメージに合うスタンプを探してたんですけど、なかなかいいものが見つからなかったんですよね。大事なところだから、とことんこだわりたかった。結構ギリギリのスケジュールだったんですが、佐藤さんが最後に「いいところを見つけました」と連絡をくれたんです。

佐藤 デザインまで全部自由に組めたので、すぐにいろいろなパターンをおこしました。

又吉 絵が入れられると聞いたので、試しに僕の好きなカラスと月と富士山で組んでもらったんです。そこから、僕のことを全然知らん海外の人がなんとなく「かわいらしいな」と思って買ってくれたときに、いちばん嬉しいのはどれだろうと考え、最終的に富士山のデザインに決めました。僕がパリで本にスタンプ押してもらったようなイメージで。

 

体験込みの本だというコンセプトを崩したくなかった

木村 なんとかすべてが整い、2020年3月19日にお店に本が搬入されて、スタンプはその後ぎりぎりに、お店の内覧会の前日、3月23日に届きました。そして24日、いよいよ情報解禁。やっとお披露目が出来たと思ったら、翌25日の夜、小池都知事が緊急記者会見を開き、初の週末外出自粛を都民に要請したんです。その週末というのがまさに「羽田空港 蔦屋書店」のオープン予定日で……。お客さまからの問い合わせも増え、蔦屋書店内でも夜通しで対応を議論したんですが、お客さまの安全を考え、翌日26日の朝に「発売延期」のニュースを出しました。お披露目からたった2日でお蔵入りになってしまうとは。

又吉 空港で買ってもらうことをイメージして書いた本だったので、今回ばかりは別の場所で販売するというわけにもいかず。僕自身、どこで本を買うかということが大事だったりするので、本を買う人にはそういう体験をしてもらいたいという気持ちを木村さんに伝えました。

木村 私も全く同意見でしたし、「リアルがダメならオンラインで販売しよう」という発想にもどうしてもなれなかった。買ったその日の日付をスタンプで記録して『Perch』が完成する。体験込みの本だというコンセプトを崩したくなかったので、いま体験することが難しければ、体験できるまで待とうと。でも、事態はなかなか収まらず、「羽田空港 蔦屋書店」自体も休業に入ってしまって。国際線エリアにある書店なので、国際線の運用が再開されない限りお店も開けられないと。この数カ月間、世の中の動きを見つつ又吉さんとは何度も話し合ってきたのですが、販売方法の妥協点はなかなか見出せませんでした。

 制作にかけた期間より発売延期期間の方が長くなり、このまま年を越してしまうのかと焦っていた矢先、福岡空港の「TSUTAYA BOOKSTORE 福岡空港」がリニューアルオープンすることを聞きました。それで、いま出来得る最大限自由度の高い『Perch』の届け方について、又吉さんに提案したんです。