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「止まり木」という意味をもつタイトルだからこそ

九龍 まず、最初に考えたのはデザイナーを誰に頼むかということでした。空港の本屋で売る以上、「お土産」というのもテーマとしてあると。当然、モノとしても魅力的なものであってほしい。ただ、つくりがかっこよかったりおもしろければいいというわけじゃなくて、本や雑誌の定石もきちんと押さえたいと思ったんです。そこでまっさきに浮かんだのが佐藤亜沙美さんでした。佐藤さんとは大森靖子さんの『超歌手VIP』っていう布張りの凝った本を一緒につくったこともありましたし、そもそもお仕事をする前から文学フリマの会場で知り合ったこともあって、ピッタリな人じゃないかと。実際、モノとしての魅力と、本としての意味を見事に両立する仕上がりにしてくれました。

又吉 内容を書いている僕が言うのもあれなんですけど、「この本、読まんくても持っときたい」みたいなことを、最初から目指していました。『Perch』にも「一行も読まなかった本を鞄にしまう」という自由律俳句を収録していますが、本って、存在そのものが重要やと思っているんです。本を買う、持っとく、鞄の中に入っている、ベッドサイドに置いてある……そういう時にしっくりくるものにしたいというのが、まずありました。

佐藤 私はお話をいただいてワクワクしましたね。その日、その場所でしか手に入らないものをつくるなんて、ものすごく素敵なことだなと。最初に本のタイトル案をいくつかいただいたので、打ち合わせのときにはラフデザインをお持ちしました。

©深野未季

九龍 中1日でけっこうなパターンのカバー案を出してくれましたよね。

佐藤 「Perch」もタイトル案のひとつに含まれていたので、それに基づいてラフをつくったら、又吉さんが目を留めてくださって。「僕がイメージしていたのは、まさにこういう感じのものです」と。Perchは「止まり木」という意味がある言葉なので、刹那的で個体差があるものにしたいなと思ったんです。そこから、表紙の色を変えて何パターンかつくるという案も生まれました。

九龍 佐藤さんのデザインが決め手になって、タイトルは『Perch』がいいんじゃないかという話になったんですよね。又吉さんも、これまでの流れとは異なるタイトルだけど、今回は、どこから見ても又吉直樹の本というものじゃなくて、もっと匿名性のある感じ、これまでのイメージから離れたものにしたいと。それもあって、著者名も漢字ではなく、欧文表記でいこうと。

 イラストを描いてくれた柳智之さんは僕も付き合いが長いんですけど、今回はカバーのラフデザインの時点で佐藤さんが彼のイラストをダミーで入れて、提案してくれたんです。ダミーといってもそれがもう完成形というか、すごくよかったので、柳さんにこの状態のまんまで二次利用させてもらえないかって連絡をして(笑)。そしたら、「もちろんそれでもいいですけど、よければ『Perch』ってタイトルに合わせて新しいイラスト描きますよ」って言ってくれたんです。しかも、中で使えるイラストもいっぱい送ってくれたので、佐藤さんがとても素敵な使い方をしてくれまして。

©深野未季