1つ1つの対局をプロと同じように大事にはできていない
――コロナ流行前の2月には東海研修会のテストを受け、女流棋士資格ラインのB2クラスで入会されたので、コロナ休会を除いて10~11月くらいに48局(B2クラス入会の場合48局の間クラスを維持しなければ資格はとれない)をクリアして女流棋士資格が得られる見込みもありました。
野原 高1のとき自分としては、強くなっている実感がありませんでした。大会に出ながらアマで強くなるのもいいけれど、1つ1つの対局をプロと同じように大事にはできていないのが良くないのかなと思いました。研修会は30分(切れたら60秒)で、アマ大会より持ち時間が長く、それにも慣れたかったです。
最初は資格がとれたらすぐ女流棋士になるかどうか迷いながら研修会に入りました。研修会員は(奨励会員と違って)アマチュア大会への出場可なのですが、肝心の大会がコロナですべて中止に。7月に倉敷藤花戦で伊奈川愛菓女流初段に勝ってベスト16に進んだあたりで、ベスト8が実現しなくても研修会で資格が取れたらプロになろうと決心しました。
――東海研修会を選んだ理由を教えて下さい。
野原 富山から一番近いからです。大阪は金沢に出てから特急に乗り換える必要があります。東京への新幹線は高いです。名古屋なら車で3時間。父に送ってもらっていました。
「『鉄板流すごい』、森内先生の将棋を目指したい」
――師匠は十八世名人でもある森内俊之九段です。弟子になったいきさつを教えて下さい。
野原 富山出身のプロ棋士はいますが、東京などに出ていますし、地元ではあまり接点がありません。女流棋士になるには師匠が必要なので、どうするか自分で考えました。
コロナの自粛期間中に棋譜並べを勉強に取り入れ、羽生善治九段や佐藤康光九段、谷川浩司九段など全局集を並べていました。森内先生の全局集はなかったのですが、羽生先生、佐藤先生の相手としてたくさん並べました。受けが強く「鉄板流(と森内九段は評されることが多い)すごい」と思い、森内先生の将棋を目指したいと思うようになりました。ちょうど放送されていた第3回AbemaTVトーナメントでもレジェンドチームの一員として活躍していて、応援していました。師匠になってもらうなら尊敬できる森内先生と決めました。
でも、どうやってお願いしたらいいのかよく分からない。都成竜馬六段が谷川浩司九段に師匠になってもらうときに手紙を書いたというエピソードを読んだり、若手女流棋士からも手紙を書いて師匠をお願いしたと聞き、手紙でお願いするものなのかと思ったんです。