「遠く及ばない」上田初美女流四段との再戦に向けた抱負
――これまで出た女流公式戦で、遠く及ばないと感じた相手はいますか。
野原 昨年のリコー杯女流王座戦で対局した上田初美女流四段です。1次予選で女流棋士2人に勝って進んだ2次予選でした。タイトル戦に何度も出ている上田先生はオーラもあって飲まれました。もちろん対策はしっかりして臨みましたけれど、通用せず、はっきり読み負けているのを感じました。感想戦でもレベルの差を思い知らされ、すべての面で負けている気がしました。このままでは通用しない、ソフト研究をもっとしなければと思いました。
――その上田女流四段とは、9月26日のマイナビ女子オープン一斉予選で再戦します。抱負を教えて下さい。
野原 初戦から強敵すぎますね。勝ち上がらないと当たれないような相手なので、こんなに早く対戦できるのは、ポジティブにとらえています。積極的に自分らしく、いい将棋を指したいです。
少しでも早く女流棋士になりたいとは考えていませんでした
――女流公式戦で何度も勝ち星も挙げていたので中学生のときに研修会に入っていれば、もっと早く女流棋士になれたのではないかと思います。
野原 英春先生には「十分強くなってから女流棋士になって、パーっと勝ち上がればインパクトがあるだろう。アマの中で揉まれながら強くなれる」と言われていました。少しでも早く女流棋士になりたいとは私も考えてはいませんでした。
――確かに、大会で格上の男性強豪と指すこともできるし、女性大会には未蘭先生同様、女流棋士に勝っている強豪もいるし、女流公式戦に出る機会も多いし、アマでいても強くなることは十分可能ですね。一方、女流棋士は(順位戦がないので)勝てれば対局数が増えるけれど、勝てないと年に公式戦10局程度に留まることもあります。
野原 女流棋士になってしまうと、大会に出られないのはデメリットだと考えていました。女性大会には東京でもよく参加していましたし、地元の大会も出られるだけ出ていました。大会に出ることで強くなることができたと考えています。
アマ大会で実現したかったこと、やり残したこと
――それがコロナで3月以降の大会は、ほとんどなくなってしまいました。
野原 アマの大会ってこんなに軽いんだとショックでした。プロの対局はすぐに再開されたのに。オリンピックもできないくらいでしたから仕方ないと分かってはいたのですが……。
――アマ大会で実現したかったこと、やり残したことはありますか。
野原 高校生の大会で優勝したかったです。高1の夏の高校選手権女子の部では、予選ではなちゃん(和田はな女流2級)に勝ったのに、決勝トーナメントベスト16で再び当たって負けてしまいました。アマ名人戦などの一般大会では、一度は富山代表になりたかったです。富山を代表するアマ強豪の方の壁は厚く、県3位が最高成績でした。
――アマ大会がなくなる中、未蘭先生がアマ枠で参戦していた女流棋戦・倉敷藤花戦は緊急事態宣言明けに続行されました。
野原 他のアマの方はすべて大会を奪われてしまったけれど、私にはまだ倉敷藤花戦が残っていると、かける気持ちは強くなりました。ベスト8に入って女流棋士になることを目標にしました。以前は、アマ大会の対策を考えながら、プロ公式戦の対策も考えていましたが、今回は倉敷藤花戦だけに集中。学校も休みになって時間もとれました。一戦ごとに相手の女流棋士の棋譜を探し、特徴を押さえて、ソフトで研究を重ねました。