文春オンライン

特集観る将棋、読む将棋

「重厚な将棋に憧れて……」17歳の女流棋士が“鉄板流”森内俊之九段に弟子入りするまで

「重厚な将棋に憧れて……」17歳の女流棋士が“鉄板流”森内俊之九段に弟子入りするまで

野原未蘭女流2級インタビュー #2

2020/09/25
note

相入玉についての知識が曖昧で、投了が遅くなった

――英春流の序盤で、ソフトの評価値が悪くなることはないでしょうか。

野原 初手9六歩を指した時点で悪くなりますし、評価値の良い戦法ではありません。プロの世界では、相手もそれを分かって英春流対策のソフト研究をしてくるだろうと思いますし、私は対策の対策をソフトで研究しなくては勝つことはできません。棋士の先生方から見ればぬるいソフト研究かもしれませんが、指定局面から研究したり、こう指されたらどうするかを細かく調べています。自分専用のパソコンも持っています。

 自分の対局の振り返りもソフトを使っています。負けてしまった倉敷藤花戦準決勝の中井広恵女流六段戦を終えてホテルに戻った時も、富山から持参したパソコンのソフトを立ち上げて1人で反省をしました。

ADVERTISEMENT

 

――中井女流六段戦では、敗勢のところから入玉を果たし粘りましたね。

野原 はい。入玉した後は、入玉将棋の経験不足でそこから大駒を取られ、中井先生が強かったです。点数が足りなくなったのは分かりましたが、宣言法のルールなど相入玉についての知識が曖昧で、投了が遅くなってしまいました。プロの対局で宣言法がこれまでなかったことも知りませんでした。Twitterで「初の宣言法なるか」とか書かれているのを見て、観る将の方のほうが私よりルールに詳しいと反省しました。

20代に全盛期を迎えられるよう、勉強を重ねていくつもりです

――中井女流六段も、「ルールをしっかり把握していないのはプロ失格。猛省です」とTwitterに書かれていましたし、難しいですよね。ところで、1年半後に高校を卒業したら進学はされますか。富山に残るか、東京か大阪に出るかどうかも教えて下さい。

野原 進学についてはまだ決めていません。卒業後は東京に出たいと考えています。研究会なども、対局以外のお仕事もしやすいと思うので。

――タイトルを取りたいとはっきりおっしゃっています。地元を中心に期待もされていますが、どう感じていますか。

野原 里見香奈女流四冠、西山朋佳女流三冠に勝ってタイトルを取るというのは、期待されていると思いますし、トップに立ちたいと思って女流棋士になりました。ただ、現時点ではお二人と大きな差があるので、もっと実力をつけなくてはいけません。まずはタイトルに挑戦できるように……。

 

 せっかく森内先生に師匠になっていただいたので、早く森内先生のような重厚な将棋が指せるようになって森内門下にふさわしい活躍をしたいです。何歳までにタイトルを取りたいとは運もあるし言えないのですが、今17歳でまだ伸びしろはあるので20代に全盛期を迎えられるよう、勉強を重ねていくつもりです。

――女流棋士になったことも大きく報道されました。学校のお友達の反応はどうですか。

野原 みんな女流棋士がどういうものかよく分かってないのですが(笑)、対局のたびに「未蘭頑張って」と応援してくれます。通っている富山第一高校は高校サッカー日本一になったこともある強豪高で、課外活動に理解があります。対局の時は公欠扱いにして、先生も応援してくれています。中学の先生に「この先将棋のことを考えるなら、理解のある私立がいいのでは」と勧められて入学して良かったです。