長年のパートナーとの同棲を解消し、都内の1Kで一人暮らしを始めたフリーライターの藤谷千明さん。しかし、ミーハーで雑食なオタクである藤谷さんの部屋にはものがあふれ、職業柄、家賃が安い郊外への引越しも現実的ではなく……。

©iStock.com

 そんな藤谷さんは、ある晩妙案を思いつき、友人にこんなLINEを送信する。

「ねえねえ、オタクルームシェアしない?」

ADVERTISEMENT

 エッセイ『オタク女子が、4人で暮らしてみたら。』(幻冬舎)から一部抜粋・編集して掲載する。(全2回の第1回/第2回を読む)

◆◆◆

「面白いほうに5000点」

 彼女の名前は丸山さん。私の100%フルスイング思いつきLINEに、秒で返事をくれた。

「唐突やね!」

 関西人のきれいなツッコミが入った。

 丸山さんとは、かつて一緒に同人誌をつくっていたこともある、15年来のオタク友達だ。コスプレイヤーでもあり、衣装製作の腕が高じて現在はフリーの服飾作家として都内を中心に活動している。彼女が関西に住んでいた頃は、イベント遠征時にお互いの家を宿代わりにしていた関係である。それゆえ、私がさまざまな前提をすっとばして、突発的に思いつきを連絡してくることには慣れている。

「うん! 実はかくかくしかじかで引越したくて(理由をかいつまんで話す)。最近ツイッターでも“こんな物件オタク同士で住みたい”みたいな間取り画像がバズってたじゃないですか~~。それに2人なら同じくらいの家賃で、広いリビングの物件にも住めるじゃないですか~~。そこで作業できますし」(※長文すぎて吹き出しがレシートのようになったLINE)

丸山「つまりこういうことやな?『生活コストを下げて、人恋しさを解消したい』と」

「Exactly(そのとおりでございます)」

丸山「ダービー弟!たしかに作業部屋ができるのは魅力的やし、オタクの2人暮らし、確実に面白いわ。面白いほうに5000点です~~~~」

「せやろ」

オタク女子が、4人で暮らしてみたら。』(幻冬舎)

「面白いほうに5000点」は、丸山さんと私の会話によく出てくるフレーズだ。若い人はご存じないかもしれないが、往年のクイズ番組『クイズダービー』が元ネタである。

丸山「でもやっぱり唐突すぎですわ。ずっと家にいるフリーランス2人だけやと、確実に揉めるのが目に見えてるし、ほんまに実行するんやったら、もう1人入れたほうが良いかと思います」

 わ~い、さすが10年来の友人、的確だ~~! なお、ベースが敬語なのは仕様です。どれだけ距離が縮まっても敬語が外れない、これもオタクあるある。

 たしかに2人だけだと、なにかトラブルがあったときお互いにどちらかのせいにしてしまいがちだ。私の経験でも、これまでの妹やパートナーとの2人暮らしでそういうトラブルは多々あった。「歯磨きのときに蛇口開けっ放し」レベルで口ゲンカになったり……ウッ、頭が……。