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「こんなに細かい絵にしなきゃよかった」と後悔することも……和田誠さんが明かした「週刊文春」表紙の秘話

和田誠(イラストレーター)×田中健五(「週刊文春」元編集長)対談

source : 本の話

genre : エンタメ, アート, 読書

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「週刊文春」で新しく始めた画法

田中 和紙に筆で描いた政治風刺漫画が戦後の新聞によく載ってましたね。今、和田さんの絵を模写している学生もいっぱいいるでしょうね。

和田 最近、イラストレータースクールがあちこちにあって、仲間のイラストレーターが講師をやっていたりするんだけど、あるとき“「週刊文春」の表紙”という出題で、生徒たちが絵を描くという授業があったんです。それで僕がゲストに呼ばれて、ということがありました。

田中 和田さんは、ずっとグァッシュ(不透明水彩絵具)で描いているんですよね。

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©文藝春秋

和田 そうです。グァッシュでケント紙にリアルに描くというのは、「週刊文春」で新しく始めた画法なんです。これは続けていこうと思っています。原寸で描くというのも最初から。自分でデザインするから、原寸だとわかりやすいんですね。あと、ときどきは変化をつけたいので、抽象画を描いたりもしますけど。一番気をつけているのは、売店で見て「これ先週買ったやつだ」と読者に思わせないことですね。写真の表紙だと、違う女優さんでも似たようなタイプの人が続くと、次の号になったかどうかわからないことがある(笑)。

デザイン会社に丸投げするのは絶対ダメ

田中 30年で、凸版印刷の製版技術は変化しましたか?

和田 最近は文句を言うことが少なくなりました。とくに今回の画集は、色の直しがほとんどなかったです。でも、アナログな名人の職人さんがだんだんいなくなって、今は機械が頼りですからね。文字もコンピューターで打つようになったから、写植屋さんも減ってしまったし寂しいです。廃れゆく中にいい写植があったんですけどね。文明の進歩と僕らの美的感覚との相性がよくないんですかね(笑)。

田中 僕は、ザラ紙に印刷した写真が、昔より粒子が荒くなっているというか、ぼんやりした写真になっているような気がするんです。編集者が細かく指定すれば、また別なのかどうか。

和田 編集者にビジュアル的センスがあれば、雑誌のAD(アート・ディレクター)なんて必要ないですよね。昔は「暮しの手帖」の花森安治とかセンスのいい編集者がいたでしょ。だんだんビジュアルはADに任せようという編集者が増えてきて。

©文藝春秋

田中 アウトソーシング時代になってしまったから、ますますそうですよね。

和田 デザイン会社に丸投げするのは絶対ダメだと思います。自分がデザイナーの立場のくせにこんなこと言うのも変ですけど(笑)。いろんな出版社の編集者が昔とは変わりました。

田中 最近は、メールでしか連絡が来ませんか?

和田 バイク便とかね。昔は編集者が直接取りに来たじゃないですか。作家と逢いたいと思う編集者が減ったんでしょう。

田中 最近は連載の最初から最後まで顔を見たこともないとう担当者がいるらしいですからね。