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「こんなに細かい絵にしなきゃよかった」と後悔することも……和田誠さんが明かした「週刊文春」表紙の秘話

和田誠(イラストレーター)×田中健五(「週刊文春」元編集長)対談

source : 本の話

genre : エンタメ, アート, 読書

note

裸にすることを「解剖」と呼んでいた!?

和田 文壇バーにも若い人は行かないみたいだし。あ、文壇バーというのも、もうないのかな。そういえば、文春は伝統的に新入社員に裸踊りさせるとか言われていましたよね。

田中 僕の時代は、裸にすることを「解剖」と呼んでいたんです。新橋に「はせ川」という小料理屋があって、そこの主人は俳人の長谷川春草なんですけど、菊池寛、横光利一、川端康成の短冊が壁にかかっているような店でね。そこの2階の座敷で新入社員を裸にして割り箸でナニをつまむ……というようなことがありました。僕より上の軍隊帰りの世代が、そういう激しい歓迎会や送別会をやって、悪可愛がりするんです。

和田 自分が新兵のとき軍隊でやられていたことを復讐としてやってるんでしょうか。

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田中 「解剖」されて泣き出した社員がいるとか、いろんな逸話がありました。昭和34、35年入社組くらいまで、そういうバーバリズムが残っていましたね。

和田 僕らもよく朝まで飲みましたけど、映画の話をするくらい。とくに赤塚不二夫と飲んだときは映画の話が多かったですね。赤塚さんは夜中の3時に飲み屋のピンク電話から僕の自宅に電話かけてくるんですよ。「あの映画の悪役は誰だっけ?」とかね。こっちは寝てるから迷惑なんだけど、彼から電話がかかってくるのが嬉しかったりしてね。

夜中に電話をかけてきた赤塚不二夫さん(左)と目玉焼きの絵を欲しがった立川談志さん ©文藝春秋

田中 いい時代でしたね。最近は、出版社が看板雑誌を潰すことも多くなってきましたけど、雑誌には寿命があると僕は感じているんです。だからこそ、その雑誌が続いているという実感を読者に持たせることが大事だと思います。アメリカの雑誌の「ハーパース・バザー」が40年くらい前に創刊100年祭をやって、その記念にむこう100年の予約を取ったんです。それは「今後100年、我々は雑誌を出し続けます」という宣伝コピーだったんだけど、実際、ものすごい数の申し込みが来たんですって。

和田 アメリカの雑誌には、洒落っ気がありますよね。

――「週刊文春」も来年50周年だから、むこう50年の予約を取りましょう、「あと50年和田誠さんの表紙でお届けします」というコピーで。

和田 それは無理だなあ。あ、でも今から毎週2、3枚ずつ描いて貯めておけばいいのか(笑)。

田中 それは大きな話題になりますね(笑)。

©文藝春秋

INFORMATION

●『表紙はうたう 完全版』刊行記念原画展
 和田誠さんと。
https://www.1101.com/hobonichiyobi/exhibition/2945.html
 
会場:ほぼ日曜日
会期:2020年10月22日(木)~11月15日(日)
時間:11:00~21:00
入場料:500円(100nuts進呈)

「こんなに細かい絵にしなきゃよかった」と後悔することも……和田誠さんが明かした「週刊文春」表紙の秘話

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