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担当していた男性ミュージシャンのケース

 依存症の問題が次々に明るみに出た芸能界。なぜいまトラブルが続出しているのだろうか。藤井氏は次のように解説する。

前回のインタビューでも説明しましたが、芸能人はその職業の特殊性から『精神的孤独』に陥りやすい。周囲にたくさん人がいて、多くの人に愛されても、周囲に気付かれずに悩みを自分で抱え込んでしまって、その孤独から心を病んでしまうのです。売れる人ほど“唯一無二”の存在。立場も十人十色ですから、親や友人だけでなく仕事仲間に悩みを相談しても共感してもらいにくい。ライバルも多く、『弱みも見せたくない』という心理がはたらきます。

 さらに、才能がなければ生き残れないという大前提の芸能界は、“労働者”に優しい環境ではありません。一般の会社員では考えられない不安定な仕事です。売れている方でも、仕事が絶え間なく入る時と、予定が空いていて先が見えなくなる時のギャップがある。経済的なことに余裕があっても、そのギャップに耐えられなくなっていきます」

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©文藝春秋

 憧れられる立場でありながら依存症に陥ってしまうのは、別の理由もあるという。

「華やかな世界にいるようですが、その生活が当たり前になると、自分の中で飽きてしまって『もっと上へ、もっと上へ』という心理が働く。これは『心理的飽和』ともいいますが、芸能人として人気が出て、安定的な地位にいても、変化がないから『なんで自分はこのままなのか』と苦しむ。そうやって自分がピンチに陥ったり、大きなストレスを抱えたりしたときに、人によっては依存的な行動に走ってしまうのです」

 実際に藤井氏が担当する芸能人の中でも、山口と同じようにアルコール依存症と躁鬱病を患ったケースがあるという。

「カウンセリングには守秘義務が課せられていますが、今回は事前にお話をして『同じ苦しみを持つ人たちのためなら』と当時の心境や病状について、可能な範囲でお話しする許可をいただきました。私が担当する人気男性ミュージシャンのAさんは、アルコールやギャンブル依存症に陥り、双極性障害(躁鬱病)とも診断されていました。抗鬱薬などの薬物治療だけではうまくいかず、私の元を訪ねてきました。