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「依存症の治療に完治はない」

 日常的に芸能人のカウンセリングを担当している藤井氏は、人目にさらされている芸能人だからこそ、依存症の治療は困難が伴うと感じていると説明する。

「依存症の治療に完治はなく、一生抱えていく場合も少なくない。症状が落ち着くまで、一般的には平均2、3年かかります。それでも断酒率は2、3割ともいわれている。私の見る限り、芸能人はその特殊な環境から一般人の倍くらい、4、5年はかかる場合も多いと考えています。

 というのも、一般の方だとアルコール依存症の自助団体に所属して、お互い支えあっていくことが非常に効果的なんです。ところが芸能人は顔が知られているので参加のハードルが高い。有名人の集まるグループも一部にはあるにはありますが、一方で本人のプライドもある上に、それまで生きていた環境も違いますから、参加しても馴染めないことが多い。更生のための一つの大きな機会が抜け落ちている状況にあります。

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(写真はイメージ)©iStock.com

 さらに、芸能人の場合、治療と並行して仕事を続けていると『よい自分』を見せざるを得ない場面がある。山口さんの事務所退所後のインタビューも、そんな『見せたい自分』をめぐる複雑な感情が全面に滲み出ているようにも見えた。取材のときは、表向きの芸能人らしい回答はしっかりできても、治療中の場合、ふと我に返った時に自分の“よそ行き”の発言と現実のギャップを認識する。そんな環境から依存症が悪化することもある。依存症との戦いは、1歩進んだと思っても2歩下がっていることのある世界ですが、芸能人なら尚更です」

 山口の場合、依存症から回復するための“絶対条件”が欠けているように感じられるという。

「専門家の治療ももちろん大事ですが、一日付き合えるわけではありません。なにより、プライベートで身近にいる人が一緒に伴走して、年単位で回復過程を支えてもらうことが重要です。さらに依存症治療で難しいのは、モチベーションを保つこと。治療の動機を高めてくれる人、心理的に支えてくれる人が必要。これは依存症から回復するための絶対に必要な条件です。山口さんはTOKIOを脱退し、ご家族も海外にいるとのことで孤立し、その条件を失ってしまっている。元の事務所の方が、治療のための病院に送るための車を出してあげるだけでも大きな支えになると思います」