アメリカにはモスクワもカイロもある
またこれは、いかにも新大陸アメリカを思わせるものかもしれないが、いくつか、外国起源の地名をみておきたい。
テネシー州やアイダホ州にあるモスコー(モスクワ)は、繁栄を願った地名であり、似たものには、サウスカロライナ州のフローレンス(フィレンツェ)などがある。
ミズーリ州のウォーソーは、独立戦争の英雄であるタデウシュ・コシチューシコ将軍に敬意を払い、ポーランドの首都ワルシャワにちなんで名付けられた。
ニューヨーク州のハンバーグはドイツのハンブルクにちなんでつけられた。ハンバーグといえば食べ物を想起するが、その起源は18世紀頃のドイツ・ハンブルクにあると言われている。しかしハンバーガーとなるとアメリカ合衆国の国民食といえる食べ物である。ニューヨーク州のハンバーグは、ハンバーガーの名称までも起源は我が町にあると主張している。
中東のレバノンにちなんだものも少なくない。オハイオ州、テネシー州、ペンシルバニア州などのレバノンは聖書のなかにある地名だからという理由のようだ。現在のレバノンの国旗にもシンボルとしてあるレバノンスギ(マツ科)は古代にはエジプト、メソポタミア、イスラエルなどの神殿の建材として貴重な木材とされていた。
イリノイ州ケーロCairo は、ミシシッピ川とオハイオ川の合流点にあり、ナイル河口デルタ地帯の豊かな農地に恵まれたカイロのようだということから名付けられた。ジョージア州ローム Romeも、丘のある町のすがたがローマの7つの丘に似ていたからといわれている。
テネシー州メンフィス Memphis も、古代エジプト王朝時代の政治、文化、外交で重要な役割をになった都市メンフィスにあやかろうという願いがあったという。古代エジプト語でメン・ネフェルとよばれていたその意味は「確立された美しきもの」で、エルビス・プレスリーの出身地として今は音楽産業で名高いが、当時、この町はアメリカでもすさまじい貧困地帯だった。