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アメリカが世界の地名を”パクった”理由 なぜ「モスクワ」も「カイロ」もあるのか

『カラー新版 地名の世界地図』より

2020/10/06

source : 文春新書

genre : エンタメ, 読書, 歴史, 国際

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様々な国から地名を拝借

 アメリカ大陸に渡ってきた探検家や入植者たちは、それまで見たこともない自然風土、動植物、物質文化に出会った。まだ彼らと平和にコミュニケーションが取れていた時代には、先住民が使う言葉をそのまま借用して、名前をつけていったものが少なくなく、今では現代の言語の一部になっているため、その起源を意識することはないだろう。アメリカ50州の州名は曖昧な起源のものがあるものの、半数強が先住民の言語に由来するものだ(大索引参照)。

 州名では、インディアンのグループ名、川や湖の地名などがもっとも多く、27州(アラバマ、アラスカ、アリゾナ、アーカンソー、コネティカット、アイダホ、アイオア、イリノイ、カンザス、ケンタッキー、マサチューセッツ、ミシガン、ミネソタ、ミシシッピ、ミズーリ、ネブラスカ、ニュー  メキシコ、ノースダコタ、サウスダコタ、オハイオ、オクラホマ、オレゴン、テネシー、テキサス、ユタ、ウィスコンシン、ワイオミング)。

 これらの地名は、文字をもたないインディアンの言葉をヨーロッパ人が聞き取り、アルファベット表記したという歴史がある。そのため、最初に記録したヨーロッパ人が、どこの国の人間かによって地名の発音が異なり、あるときはフランス語的に、あるときはスペイン語的になっている。

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 次は、イギリス国王の許可のもとで植民がおこなわれたという歴史から、英語の地名が11州ある(デラウェア、ジョージア、メリーランド、ニューハンプシャー、ニュージャージー、ニューヨーク、ノースカロライナ、サウスカロライナ、バージニア、ウエストバージニア、ワシントン)。

 スペイン語地名は5州(カリフォルニア、インディアナ、コロラド、フロリダ、ネバダ)。

 

 フランス語地名は3州(ルイジアナ、メーン、バーモント)。

 ラテン語地名が2州(モンタナ、ペンシルバニア)。

 オランダ語名が1州(ロードアイランド)。ハワイ・ポリネシア語名が1州である(ハワイ)。

 都市名では、イギリスからの植民が早い時期からおこなわれた東部に、本国イギリスから拝借してきた地名が多い。その数は100をこえる。

 初期の重要な地はマサチューセッツ州プリマス。1614年に、バージニア植民地ジェームズタウン開拓の指導者ジョン・スミスがこのあたりをニュープリマスと名付けていた。これはイングランドの都市プリマスの名前に由来する。その後、1620年9月16日、清教徒たちを乗せたメイフラワー号が、そのイングランドのプリマスからアメリカへ向けて出発し、12月21日、偶然にもこのプリマスに上陸した。

 この他、コネティカット州ダンベリーン、ニューブリテン、ニューヘブン、デラウェア州ドーバー、ニューロンド、ニューハンプシャー州ポーツマス、バージニア州リッチモンド

 などなど、これらはいずれも本国からもちこまれた名前だ。