眞鍋准教授らが発表した「50m走の測定誤差」の結果とは
眞鍋准教授らが発表したのは『ストップウォッチを用いた50m走タイム手動計測における系統誤差・偶然誤差の定量』と題した研究論文。
この研究では、8名のアスリートにそれぞれ1日5~6試技、3日間で計 16 試技の 50 m 走を実施し,合計 128 試技を実施。そして、異なる計測機器によって測定されたタイムを検証するために、その全ての試技について8名の計測者が同時にストップウォッチを用いて手動計測を行った。そうして得られた1000を超える数のタイムを、ビデオ計測で行った正確なタイムと比べてどれだけの誤差がでるのかを調査したのが今回の実験概要だ。
眞鍋准教授が説明する。
「結論から言うと、手動計時と電気計時、測るものの違いだけでみると、誤差は0.27秒という結果だったんですね。これは、昔の陸上界で手動計時と電気計時の両方が公認記録として認められていた時代におけるルールである『手動計時を電気計時に換算する場合は、手動計時の記録に0.24秒を加算する』という値に近い。なので、まぁこんな感じかなという数字でした」
一方で、驚いたのはその測定方法の違いではなく、測定方式による差のほうだった。
「一番我々がビックリしたのが、『タッチダウン方式』でタイムを取る際の差です」
大きな差を生む『タッチダウン方式』の測定
眞鍋准教授の言うタッチダウン方式とは何か。
「陸上競技の場合、記録は電気計時による測定ですので、スタートの号砲と同時に電気信号が流れて、計測が始まる。一方で、球技の選手が50mを測定する際には、1歩目が地面についた瞬間を計測者が目視して、そこから測定をスタートする方法で記録を測ることが多い。これを『タッチダウン方式』と呼んでいるんです」
そしてタッチダウン方式での測定では、スタートの号砲音で計測を開始した記録と比べて“0.6秒”もの差が出ていたという。そこに手動と電気での計測差を合わせると、タッチダウン方式では実に「0.87秒」もの差がでることになるわけだ。
「スタートの瞬間から1歩目がつくまで、0.6秒もかかっていたというのはちょっと衝撃でしたね。遠くからの目視だとほとんど気にならないんですが、実は結構な差がでていた。0.6秒なんていったら100m走競技では取り返しのつかない差ですから」