昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

「スパイ」にまみれた戦争の時代 それでも「絶対に切り離せない何か」とは

映画『スパイの妻』黒沢清監督(映画監督)――クローズアップ

2020/10/16

8Kバージョンは「相当すごい」

――今回、残念ながら8Kでの映像を見ることはできなかったのですが、実際どのような違いがあったんでしょうか。

黒沢 作ったこちら側からするとだいぶ違います。8Kバージョンは相当すごいものでした。当初は、映画版も8Kのあの感じにできるだけ近いものを残せないかと試行錯誤したんですが、結果から言うとそれはやはり無理でした。8Kって単に粒子が細かいというだけではなく、1秒間に60コマなんですよ。映画は24コマ。そこからもう違うんです。

©2020 NHK, NEP, Incline, C&I

――具体的にどう変わってくるんでしょうか。

黒沢 ものすごく鮮明で粒子が細かくて、ありありと今そこにあるように見えてしまう。だからこそ撮影では苦労もしました。というのも、鮮明であるということは、一方では、あまりに生々しすぎて、「ああ、俳優が演技しているな」ということがそのまま見えてしまう。まったくフィクションにならないわけです。

――それは撮っているときから意識されていたんですか。

黒沢 ええ、だから僕が望んだのは、この生々しさをどうやってフィクションとして成立させるかということでした。最初は画を少し汚くしてまるでフィルムみたいにするとか、極端な話、古い白黒の映像にすることも考えたんですが、そうすると8Kで撮る意味がまるでなくなってしまう(笑)。だから「画面は絶対に汚くはしたくない。きれいなままで生々しさをできるだけ消したい」と無理をお願いしました。NHK側も、4Kで撮る大河ドラマなどの経験でその苦労はよくわかっていて、最終的に出来上がったバージョンは当初の理想にとても近づいていました。まるで動く絵画のようでした。ありありとそこにあるように鮮明で美しく、でも生々しさとは違う。映画版は割り切って普通の映画としてつくりましたが、機会があればみなさんにも8Kバージョンをぜひ見てほしいなと思いますね。

くろさわ・きよし/1955年、神戸に生まれる。『CURE キュア』(97)で世界的に注目され、国内外で多くの映画ファンを魅了する。『トウキョウソナタ』(2008)でカンヌ国際映画祭ある視点部門審査員賞、『岸辺の旅』(14)では同監督賞を受賞。

INFORMATION

映画『スパイの妻』
10月16日より新宿ピカデリーほか全国ロードショー
https://wos.bitters.co.jp/

この記事の写真(11枚)

+全表示

ツイッターをフォローして最新記事をいち早く読もう

週刊文春をフォロー