昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

2020/10/23

genre : ライフ, , 歴史, 社会

通常稼働しているメリーゴーラウンド

 この通りをクルマでしばらく下っていくと、レストランやペンションなどが集まった「萌木の里」があり、こちらは現在も人気の観光スポット。様々なミュージシャンのPVにも登場したというメリーゴーランドも健在だ。

メリーゴーランド

 暗くなってから撮影したので怖めになってしまったが、通常稼働している。

 また歴史のある「清泉寮」や、周辺の牧場、自然を活かした施設の数々も根強い人気があり、シーズンには多くの観光客が訪れるという。清里で死んでいるのは、駅前のメルヘンタウンだけなのだ。

 最後に、気になったスポットに寄ってみることにした。「ワンハッピープラザ」から出ていたシャトルバスの行き先だ。調べてみると、清里駅からクルマで10分ほど離れた場所に、姉妹施設の「ワンハッピーパーク」があり、そこにも多くのショップが立ち並んでいたというのだ。

 さっそくクルマに乗り、ここだと思う場所に着くと、広大なモールの跡地のようなものが現れた。

 

 荒れ果ててはいるが、メルヘン溢れるショップがステージのように立ち並んでいたようだ。ただよくみるとファンシーなのはガワだけで、実際は倉庫のような建物に装飾を施しただけである。

 
 

 照明は「ワンハッピープラザ」と同じデザイン

 

 看板には「りよん」、「里里庵」(たぶん、りりあんと読む)、「ABBEY ROAD」など、無邪気にメルヘンを発揮した看板が並ぶ。

跡地を利用した巨大な工場が

 広いぶんだけ荒涼とした雰囲気の漂う「ワンハッピーパーク」跡地だが、なぜか周囲には独特のニオイが漂い、よくみると誰かが建屋内で何かの作業をしている。中をのぞいてみると、なんと跡地を利用した巨大なキムチ工場になっていた。

 

 キムチは販売するだけでなく、近くのレストランでも出されているようだ。

 清里には今回訪れた場所だけでなく、周辺にはまだまだ魅力的な廃墟がたくさんある。バブル絶頂期の意匠やデザインが施された施設が、ほぼそのまま現存しているのは文化遺産としては非常に貴重で、観光資源としての需要もありそうだ。

 しかし、建物の権利も複雑だろうし、老朽化に伴って危険な場所も多い。なによりも、現地の人たちにとって「廃墟で町おこし」というのは、なかなか踏み切れない領域だろう。

 ただ、清里のメルヘン廃墟から感じるのは、不気味さや寂しさだけでなく、あの頃のやみくもなパワーや圧倒的な勢いだ。

 イメージを統括するようなプロデューサーや、大手のデベロッパーなどを介さず、勝手に時代の空気を読んだ野心家たちが、雑多にそれぞれの「メルヘン」を表現した所に価値がある。

 何もなかった高原にメルヘン&ファンシーな町並みが出来上がったこと自体が夢物語であり、そんな蜃気楼のような魅力がいまの清里にも漂っているのかもしれない。

この記事の写真(33枚)

+全表示

ツイッターをフォローして最新記事をいち早く読もう

文春オンラインをフォロー