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2度の襲撃の後

 2015年夏、井上邦雄率いる4代目山健組を中心とする主要13団体が突如、山口組を離脱し、「神戸山口組」を旗揚げした。これに同年12月、2代目古川組も追随したことで、古川恵一は狙われる存在になっていた。

 とりわけ古川組の移籍は6代目山口組・竹内照明若頭補佐による直々の残留要請を受けた翌月にあっさり反故(ほご)にするなど義理を欠くかたちとなったため、標的としてのトリアージも順位の高いものになってしまった。

 実際、恵一はこれまでも2度、襲撃に遭っている。

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 2018年3月には6代目山口組傘下の平井一家組員3人が尼崎の居酒屋から出てきた恵一に鉄パイプやバットで殴る蹴るの暴行を加えており、2019年7月には同じく尼崎の居酒屋の前で弘道会若中(わかなか)・三木一郎に傘で頭部を殴られるという事件が起きている。

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 今回の「蜂の巣銃殺」は、これら2つの事件の延長線上にあると考えるのが自然だろう。

自動小銃を使った理由

 私はこの事件に強烈なメッセージを感じる。ただ恵一の命を殺(と)るだけなら道具(チャカ)1丁あればすむことである。それをあえて「自動小銃による射殺」に処したというのは一種の警告にほかならない。

 犯行に「M16」が使われたというのも偶然ではないだろう。「M16」は米軍が採用する制式小銃であり、拳銃に比べ射程が長く、さいとうたかをの劇画『ゴルゴ13』のデューク東郷が愛用することでも知られる。

 このような軍用銃がやくざの抗争に登場したのは1987年の「山一抗争」における「山広邸襲撃事件」以来である。当時、竹中組安東会会長だった安東美樹は一和会・山本広会長宅に向けて対戦車用ロケット弾を自動小銃に装着して発射しているが、そのときに使われたのが「M16」である。

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 その安東は現在、6代目山口組若頭補佐で2代目竹中組組長であり、今回の射殺事件の朝比奈容疑者の元親分でもあるのだ。