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「そう。『渡鹿野島の方が待遇が良かった』と、警察に駆け込まれた。女は警察に『渡鹿野島に返してくれ』と助けを求めたらしいんだ。

 女は、家庭が崩壊していて家出状態だった。それで俺の別宅に転がり込んで来て、そこには若い衆もいたから自然と男女の関係になるわけ。それが嫌だった女から『どこかに連れてって欲しい』と相談された俺は、一旦、実家に帰らせることにした。

 俺は、親に娘の現状を正直に話した。でも両親は『もう要らん』と見放したんだ。それで俺は『もう“売春島”しかないな』と言った。すると女は『そこでいい』と言ったんだ。

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置屋のあった島の路地裏(著者提供)

 親に見放され、帰る場所がなかった女にとって“売春島”は実家暮らしより居心地が良かったらしい。置屋のママが母親代わりに施してくれていたんじゃないかな。

 そこから俺の転落が始まるんだ。俺は一旦逃がして、中継ぎでソープで働かせ、バンスの二重取りを企てた。しかし、これは警察に聞いた話だけど、その晩、俺の若い衆が女を無理矢理やってしまい、それが嫌で警察に泣きついた。

 カネに目が眩み、当時は感覚が麻痺していた。だからそんな悪事を働いてしまったんだ」

 逮捕の引き金を引いたのは自分自身だった。俺に相談してくれれば捕まることはなかった、ケータイでも持たせておけばと後悔しているという。

 逮捕後はどうなったのか。

「同時にホテルの女将と置屋のママも捕まった。

 捜査の焦点は金銭の授受だった。仮に置屋のママが『渡した』と自白したとしても、俺はお金を『もらってない』とシラを切り続けた。2人だけしか容疑者がおらず、そこで意見の相違があればパイになったかもしれない。でも、そこにホテルの女将が加われば、1対2の構図になる。

店舗内に残っていた裏カジの備品の無線機やレートの書かれたプレート(筆者提供)

 結果、置屋のママとホテルの女将は起訴されず、俺だけ実刑になった。つまり俺に、責任をなすりつけたんだと思う。俺は弁護士との話で、有害業務の斡旋については、10年以下の懲役、もしくは100万円以下の罰金と知り、100万円以下の罰金で済むと思っていた。俺は現役ヤクザで、警察にとっては大きな手柄。だからハメられたんだと思っている」