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 そこで奥の手をひねり出しました。『iPhoneを探す』です。これはiPhoneを誤って紛失したとき、パソコンからiPhoneのGPSへアクセスし、どこにあるのかを特定できる機能。当日、妻はiPhoneを持ち歩くでしょうから、iPhoneの在り処=妻の居場所=不倫デートの待ち合わせ場所だと言えます。

 本来、これは不倫デートの調査を目的としたツールではありませんが、孝治さんも背に腹は代えられないので、当日、パソコンを持参し、この機能を使うことにしました。

ミッション(2)不倫相手に慰謝料を請求

 そして当日。前もって入念に準備を重ねたおかげで、孝治さんは現場(男と妻がコンビニの前で待ち合わせをしている瞬間)をおさえることができたのです。妻と男がまるで恋人のようにイチャイチャする姿を目の当たりにし、見つけてしまった写真や動画のやり取りを思い出すと、もう感情を抑えることができません。2人に向かって飛びかかり、妻の手を力ずくで掴むと、「ふざけるな! ここで何やってるんだ!!!」と詰め寄ったのです。

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写真はイメージです ©iStock.com

「こっちはLINEのトークやFaceTimeの動画を保存しているんだ! これって客観的な証拠だし、言い逃れの余地はないはずだ! 悪いと思っているんだったら慰謝料を払うべきでしょう!」

逆ギレ、そして泣き落とし

 孝治さんは事実関係に焦点を当てた上で「100万円の慰謝料」という条件を突きつけましたが、男は全く怯むことなく、別の切り口で言い返してきました。

「彼女から聞いているよ。『バレたら離婚でもしょうがない』って。とっくの昔に結婚生活は破綻していたでしょ? だって夜の生活もなかったみたいだし。離婚はあんたの責任なんだから、こっちに押し付けるのは筋違いなんじゃないか?」

 慰謝料とは「離婚する場合、払わなくても良い」「離婚しない場合、払う」というものではありません。確かに離婚するかどうかで、孝治さんが被った精神的苦痛の大小は変わってくるかもしれませんが、金額の高低はともかく、根本的には「離婚しようと、しまいと」払わなければならないのです。

写真はイメージです ©iStock.com

「離婚の件と慰謝料の件を混同しているのではないか? 離婚はこちらの問題でそっちとは関係がないから、くれぐれも勘違いしないでくれ!!」

 孝治さんはそうやって声を振り絞りました。心中を察すると私も心が痛みます。「離婚」という違和感ありありの二文字を連呼すればするほど、孝治さんは自分の存在意義、夫としてのプライド、男としての自信をズタズタに切り刻まれているだろうことは想像に難くなかったからです。

「わかった、わかった。でも、もう少し待って欲しい」

 男はとうとう目の前の相手を丸め込むことができないと観念したのか、今度は「泣き落としの策」に切り替えてきました。女々しくも、「100万円を分割で払わせてほしい」と支払の猶予を求めてきたのです。