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「女だから無罪放免」ではなく、決定権は不倫の被害者が持つ

 妻は孝治さんの心境など露知らずという感じで、涙ながらに懇願してきました。過去の経緯を振り返ると、妻の反省や改心、贖罪の気持ちは信じるに足りないのは当然でしょう。妻は不倫の加害者であり、家庭、夫婦関係を壊した張本人なのに「離婚するか、しないか」の決定権を持っていると思いますか? 当然、「女だから無罪放免」ではなく、決定権は不倫の被害者が持っているのです。

 なぜなら、不倫(法律上は「不貞行為」)は法律の条文のなかで「婚姻を継続しがたい事由」とされ、裁判所で争えば裁判官が離婚を認める可能性が高いのだから。つまり、今の時点で妻が離婚を拒んだとしても、孝治さんが妻を許さず、裁判を起こせば、妻の反対を押し切って離婚が成立するのです。

(参考)民法第770条
夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
一 配偶者に不貞な行為があったとき(以下、省略)

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「遅かれ早かれ『離婚』という結果は変わらないよ。でも長引けば長引くほど、お互いに傷つけあってしまうんじゃないかな? 例えば、慰謝料とか……同じ結末が待っているなら、なるべく円満に終わらせるのがお互いのためでしょ?」

 孝治さんはそう投げかけましたが、妻の年収は100万円。どうせ慰謝料を払えないことは分かった上で、あえて「慰謝料」という言葉を使いました。

離婚届は最近ではダウンロードしてプリントアウトすることもできる

不倫しやすく、バレやすい時代

 妻は数日後、署名済みの離婚届けを自宅リビングに置いて家を出ました。「慰謝料を請求されたらどうしよう」と恐れおののいたのか、間男3号、4号がいて、夫にこれ以上秘密を知られるのが耐えられなかったのか。それとも離婚をさらに先延ばしするのは無理だと観念したのか、今となっては定かではありませんが。

 このようにSNSの普及やソーシャルゲームのチャット機能、誰でも友達申請できる機能、アバターやピグの匿名性などのおかげで、今までよりも男女の出会いの場が増えたのは確かです。しかも見ず知らずの男女が直接会ったり、性交渉に及んだりすることに対する心理的なハードルは下がっているようですが、このことは未婚同士に限らず、既婚の場合も同じなので、今までよりも不倫しやすい世の中になったと言えるでしょう。

 一方で写真の同期機能、スマートフォン紛失時のGPS機能、SNSのタグ付け(写真に映っているのは誰かを投稿できる)機能、テレビ電話の機能、データのバックアップ機能、パスワードの管理アプリなどにより、今まで以上に不倫の足取りがネット上に残りやすくなり、足跡をたどって不倫の証拠を手に入れるのが容易くなったのも、また事実なのです。